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松坂世代、ダイエー戦士 ラストワンの決断

ソフトバンク・和田毅が今季限りで現役を引退 日米通算165勝左腕が貫いた美学

 

日本シリーズ敗退から2日後に届いた衝撃的なニュース。球団発表から7時間後に行われた会見で左腕は、すがすがしく22年間のプロ野球人生にピリオドを打つことを決めた理由を語った。
写真=湯浅芳昭

早い段階で今季限りでの引退を決めていたという左腕。悔いのない決断に、会見では涙はまったくなかった


 この時期に飛び込んでくるニュースには、ドキッとさせられることがある。11月5日の朝もそうだった。10時にソフトバンク球団が公式発表したのが、『和田毅投手の現役引退について』だった。

 1980年度生まれの「松坂世代」、そしてダイエー入団で最後の現役プロ野球選手が、ユニフォームを脱ぐ。同日17時から本拠地・みずほPayPayで行われた会見の場に現れた左腕は、スッキリした晴れやかな表情を浮かべていた。

「振り返っても悔いのない、やり残したことのない野球人生だと思っています」

 その言葉にウソ偽りがないことを示すような表情だった。

 一番、驚いたのが、「今年の7月過ぎぐらい」には引退の意思を固めていたということだ。ここ5年は“いつダメになっても……”という思いは持っていたという中で、今年は「体がボロボロになっていくと感じながら投げていた」。ただ、自らの決意はひた隠しにしてきた。

「『和田さんのために日本一になろう』とか、そういう空気にだけは絶対にしたくなかった。優勝したのはチーム全員の力。その中に私情を挟みたくなかった」

 知っていたのは本当にごくわずか。内密ゆえに、11月4日には一部メディアで来季も現役続行の報道が出たほどだった。

 引退試合に関しても、左腕の強い“こだわり”が光る。

「22年間、真剣勝負をやってきたという自負は持っている。引退試合となると、どうしても野手の方が三振してくれたり。僕のプライド的には真剣勝負を22年間やってきて、奪ってきたアウトの中にその1つを入れたくなかった」

 そこには相手野手を思っての気持ちも含まれる。自分との対戦によって成績が下がる可能性を考えると、シーズン中に引退試合をやることの意味はどうしても見いだせなかった。

 今後については、「選手ではない立場でホークス、野球界に貢献するために、勉強する時間を割きたい」と語り、「勉強」の詳細については「野球もそうですし、野球以外のことも」と期待をふくらませた。さまざまなことを学んだ左腕は、また必ずホークスの力となってくれるに違いない。そのときが楽しみだ。

引退会見には同期入団の新垣渚氏をはじめ多くの後輩たちも駆けつけた。和田の人望の厚さがうかがえる


■和田毅の年度別投手成績

※赤数字はリーグトップ、「登板」のカッコ内数字は先発数


■主なタイトル・表彰

◆MVP=2010年
◆新人王=2003年
◆最多勝=2010、16年
◆勝率第一位=2016年
◆ベストナイン=2010年[投手]

PROFILE
わだ・つよし●1981年2月21日生(43歳)。179cm81kg。左投左打。投手。島根県出身。[甲]浜田高-早大-ダイエー・ソフトバンク03自-オリオールズ12-カブス14-ソフトバンク16〜24引=18年。
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