オープニングラウンドを勝ち抜いた日本、C・タイペイ、アメリカ、ベネズエラで行われたスーパーラウンド。日本は3戦全勝で勝ち上がり、C・タイペイと優勝を懸けた一戦に臨んだ。しかし、まさかの完封負けで頂点に届かず。スーパーラウンドの3試合、決勝の戦いを振り返る。 取材・文=杉浦多夢 写真=高原由佳、兼村竜介、川口洋邦 【プレミア12 スーパーラウンド REVIEW 3戦&決勝】はこちら 【第1戦】日本 9-1 アメリカ
短期決戦で求められる“修正力”と“積極性”

先発の高橋は前回登板の反省を生かして4回無失点の快投
先発の
高橋宏斗が見せた修正力、そして
井端弘和監督が戦前から唱えていた国際大会での攻撃における重要ポイント。オープニングラウンドをトップ通過して迎えたスーパーラウンドは、4カ国での総当たりによって決勝進出国が決まる。重要となるその初戦で、なぜ侍ジャパンが国際大会で強さを発揮できるのかを見せつけた。
「スーパーラウンドの流れを決める試合」と意気込んでいた高橋は、初回の3者三振を皮切りに4回2安打8奪三振、無失点。同じく4回で7安打2失点と乱れた韓国戦から中5日で鮮やかに立て直した。ストレートとスプリット頼みになっていたところにカーブやカットボールを効果的に交え、「韓国戦はがむしゃらだった。バッターがどんな反応をするか考えながら、余裕を持って投げられた」と振り返る。短期決戦のわずかな時間の中で、本来の自分を取り戻すことができる修正力が求められるのは言うまでもない。
終わってみれば9得点の要因は、2本塁打を含む3安打7打点と爆発した
小園海斗の打棒によるところが大きい。だが、なぜ指揮官は小園を重用するのか。大会前から語っていた「どの打順でも打つことができる」「積極的に初球から打っていける」という小園のストロングポイントは、いくら研究・分析を進めているとはいえ相手のデータが少ない国際大会では必須の要素と考えているからだ。

小園は3安打2本塁打7打点でチームを勝利に導いた
それをチームとして体現したのが、5回に第2先発の
隅田知一郎が代わり端に一発を浴びた直後の攻撃。一死から
源田壮亮が「ちょっと思い切って初球を振ってみようかな」と、初球のストレートをたたいて中前打。チーム2本目の安打が打線に火を点け、つながりを取り戻し、
坂倉将吾の同点適時二塁打、小園の勝ち越し2点適時三塁打を呼び込んだ。

隅田は一発を許したものの2回3奪三振で役割を果たした

5回一死からの源田の一打が逆転のきっかけとなった
「先制されたが、焦らず戦えた」という井端監督の言葉は、5回の“侍らしい”攻撃あってのものだった。
■2024.11.21@東京ドーム □試合開始=19時3分 □試合時間=3時間7分 □入場者=26,297人
■打撃成績 
※△は左打ち
【第2戦】日本 9-6 ベネズエラ
一発の“怖さ”を体感 真骨頂を見せて逆転勝利

6回に飛び出した牧のグランドスラムがチームを救った
井端弘和監督は前夜のアメリカ戦のあとに「ランナーをためての一発であっという間に点差が縮まる」と本塁打には最大級の警戒を示していたが、その“怖さ”を味わうことになった。
初回に3点を先制したものの、直後の2回に先発の
才木浩人が2ランを浴び、6回には才木のあとを受けた
井上温大が逆転の2ランを含む3失点。井上は「気持ちが空回った。コントロールがアバウトになってしまった」と声を落とした。

23歳の井上は国際大会の怖さを味わうことに
捕手の坂倉将吾は井上の被弾について、「四球からだったし、防げた一発だった。スライダーにうまく対応してきたが、もっと伏線を使えればよかった」と反省の言葉を口にする。9対5の9回には抑えの
大勢も3安打にバッテリーエラーが絡んで失点。「甘いボールがあった。しっかり投げ分けをしていきたい」と振り返った。一戦必勝の舞台では、繊細さがわずかに欠けるだけでも命取りとなってしまうということだ。

リード面で反省を口にした坂倉は6回に逆転劇を呼び込む一発
井上が逆転を許した直後、坂倉のソロで反撃の口火を切り、二死からつなぎにつないで
牧秀悟が満塁弾で締めた攻撃は侍の真骨頂。投手陣に生まれた隙を攻撃陣がカバーし、快勝劇に転じてみせた。
■2024.11.22@東京ドーム □試合開始=19時8分 □試合時間=3時間52分 □入場者=33,300人
■打撃成績 
※△は左打ち