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<第79回JABA東京スポニチ大会>看板の投手力前面に鷺宮製作所が初優勝!! 復活の兆し見えた劇的サヨナラV

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2022年12月1日から鷺宮製作所を率いる幡野監督は神宮の杜を舞った


 社会人野球のシーズン開幕を告げる第79回JABA東京スポニチ大会は神宮球場など、4会場で開催された。決勝は鷺宮製作所が大阪ガスを5対2のサヨナラ勝ちで下して初優勝。10月に開催される社会人野球日本選手権の出場権を獲得した。

 この2年間、都市対抗と社会人日本選手権の二大大会出場を逃してきた。2022年12月1日から指揮を執る幡野一男監督(創価大)は「自分たちで考えて、普段の練習からテーマを持って励んでくれた選手のおかげ。2年間、長く暗いトンネルの中にいましたが、やっと見えてきた小さな光を、もっと大きくしていきたい」と選手をたたえ、笑顔を見せた。

守護神が勝利への執念


 チームの強みは投手陣だ。今大会は中島隼也(城西国際大)が救援で3試合に登板して3勝。タイブレークも含め、通算7回無失点と見事な火消しぶりで、MVPを受賞した。

「この冬はラプソードを使って自分のデータを集め、動画を撮ってもらってフォームを改良してきました。今は軸足を押し込むことを意識していて、上げた足を下ろしながら地面を押し込み、前方で体を回して投げています」

 JFE東日本との準決勝では152キロを計測。「この時期に150キロを超えるのは初めて。最速は153キロなので、自己記録を更新できる手応えがあります」。幡野監督によると「オフシーズンは個人に任せることが多かったのですが、そのために、まずは自分を分析すること。それで長所と短所を明確にするところから始めました」と話しているが、チームとしての方針をしっかりと実践したことが成果につながっている。

 準決勝と決勝は同日に行われたため、中島隼は1日で2試合に連投することとなったが、マウンドに上がることを直談判。「決勝は大会の最後の試合なので、先のことを考えなくても済みますし、勝ったら優勝ですから『使ってください』と伝えました」。指揮官も「試合の中盤くらいに『投げます。勝ちましょう』と言ってくれたので、じゃあ行こうと決断しました」とその心意気を尊重し、信頼を示している。

救援で3試合を投げ、3勝を挙げた中島がMVP。同日に行われた決勝、準決勝では、連投を直談判した


 2年目のサウスポー・竹丸和幸(城西大)は150キロに迫るキレのある速球と変化球を巧みに投げ分け、2試合通算で13回を2失点。また、指揮官が「今季は全員で戦うことを目標にし、投手陣は継投を視野に入れているのですが一人ひとりの役割ができてきました」と話すように、大事な初戦と決勝で先発を託した渡部翔太郎(明大)を5イニング未満でスイッチさせるなど早めの交代をする場面も目立った。

自チームで都市対抗へ


 チームスローガンには「全員野球~Team The Rescue この瞬間を全力で!~」を掲げている。主将・野村工(拓大)は「サブにレスキューという言葉を盛り込んだのですが、誰かがミスをしたら誰かが救ってカバーすればいい。普段の練習から合言葉のように使って、声掛けをしています」。また、「個々のテーマに沿って練習していましたが、バッティングやウエート・トレーニングなど、それぞれの場所で自然とグループができるので、個を基本にしながらも互いに鼓舞し合いながらチームでやれていたと思います」と良い雰囲気のなかで練習をすることができた。

 野村主将は大阪ガスとの決勝で、2対2の9回裏に劇的なサヨナラ3ラン。「人生初のサヨナラ弾だったので、夢を見ているようでした。後輩たちに全国大会の舞台を経験してほしいという一心でやっていましたが、その後輩たちがつないでくれたチャンスだったので、絶対に決めてやるという気持ちでした」。野村は特別賞を受賞した。

2対2の9回裏、主将・野村がサヨナラ3ランを放ち、初優勝を決めた


 首位打者賞は打率.571(14打数8安打)の村上公康(城西国際大)が獲得。新人賞には島野圭太(帝京大)と鷺宮製作所勢が個人賞でもにぎわせた。「八木茂コーチ(元阪急ほか)から毎日ノックをしてもらって、自信が付いてきました。これからも新人らしく、がむしゃらに自分の役割を全うしていきたいです」(島野)

 幡野監督は言う。

「良いスタートが切れたのは間違いありません。今後も自信を持って戦っていきたい」。野村主将は「今大会は出来過ぎだった面もあると思うので、良かったところと悪かったところを整理して、課題をつぶしていきたい」と話し、中島隼は「一昨年と昨年の都市対抗には補強選手として出場しましたが、やっぱり自チームのユニフォームを着て出なきゃいけないと感じています」と、本戦出場への思いを新たにしている。

 大阪ガスは、試合終盤に強さを見せて準優勝。峯岡格監督(早大)は「しっかりと粘って失点を抑え、冬にスイング力を強化してきた打線がワンチャンスを生かしてくれました」と話し、今後への収穫を手にしている。今年の都市対抗の本大会は開催時期が例年より1カ月半ほど遅い8月28日に開幕。黒獅子旗を目指し、今年も激戦が繰り広げられる。

■第79回JABA東京スポニチ大会結果

取材・文=大平明 写真=矢野寿明

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