今季の楽天は足で流れを変え、勝利をつかんでいる。そこには、三木監督が徹底してきた走塁への意識改革と、技術強化が根底にある。チームとして走塁を戦術として確立させた、明確な狙いを探っていく。 写真=兼村竜介、下田知仁
※成績は5月18日現在 
5月5日のロッテ戦では、自慢の足を使ってノーヒットで勝ち越しの1点を奪った小深田
ミスを誘う好判断
40試合を終えて、盗塁数43、盗塁成功率.956はともに両リーグトップの数字を誇る。だが、ただ盗塁数を稼いでいるわけではない。数字を紐解くと
三木肇監督率いる今季の楽天は、盗塁を効果的に勝利に結びつけていることが分かってきた。
盗塁した試合の勝率は.583。一方しなかった場合の勝率は.250と大きく下がる。さらに得点数は盗塁した試合で平均3.6点に対し、しなかった場合は平均1.8点。43盗塁中、得点に結びついたのは14盗塁と得点との直接的な結びつきが多いわけではないが、積極的に動いている試合で勝率が上がっていることは確かだ。またチームの盗塁成功率が高いことで、ランナーがいるときの相手バッテリーと守備陣の警戒心が高まり、ミスも生まれやすくなると予想される。
■盗塁と得点の関係 足を絡めた攻撃で特に貢献しているのが、リーグトップの盗塁数(12)を誇る
小深田大翔だ。小深田が走った9試合中7試合でチームは勝利しており勝率は.778とより効果的な盗塁をしていると言える。
象徴的な試合が5月5日のロッテ戦(ZOZOマリン)だ。同点の6回に四球を選び出塁するとすかさず二盗。送球が小深田の腕に当たりボールが転々とする間に三塁を陥れチャンスを広げると、
浅村栄斗のショートゴロで果敢にホームを狙い、貴重な勝ち越し点を奪った。相手の守備の乱れもありノーヒットで得点をもぎ取ったこの場面、そのミスを誘ったのが小深田の走塁だった。
さらに13日の同戦(楽天モバイル)でも、同点の9回に四球で出塁し二盗。ヒットで三塁まで進むと
渡邊佳明のレフトへの犠牲フライで生還し、サヨナラ勝ちに貢献した。派手さはないが、こちらも小深田の足が勝利へと直結した試合と言える。
2023年の盗塁王である小深田だが、昨季は打撃面で苦しみ出塁率、盗塁数がともに減少。「塁に出ないと走ることはできない。毎年課題ではありますが、打撃と出塁率は高めていかないといけない」とオフからスイング軌道を見直すと今年に入り打撃が安定。さらに出塁率はチーム2位の.347で四球率は同トップの.133となった。果敢に次塁を狙う俊足が塁にいるだけでも相手バッテリーにとっては脅威だ。打線に欠かせぬ理由はこの数字からも見えてくる。
引き継がれるメソッド
コーチとして
日本ハム時代には
西川遥輝、
ヤクルト時代には
山田哲人を盗塁王に導くなど三木監督の走塁指導には定評がある。そして現在はそのノウハウを
塩川達也コーチが引継ぎ、楽天の選手たちへと受け継がれている。足が速い=盗塁がうまい、ではない。リード、帰塁、走路、スライディングなど盗塁には走るだけではない技術が詰め込まれているからこそ、その一つひとつを選手たちに説いているのだ。
FAでヤクルトに移籍した
茂木栄五郎の人的補償で加入した
小森航大郎は昨季のイースタン・リーグ盗塁王で、ここまで4盗塁。だが本人は「盗塁は得意ではなかった」と振り返る。楽天加入後に塩川コーチの指導を受け、盗塁への意識が大きく変わったという。「ただ漠然と走っていたのですが、なぜスタートが切れたのか、(リードで構えているときに)どこを見ればいいのかを指摘されました。100%スタートが切れる場面でいかなくてはいけないのだから、それだけの準備をしなくてはいけない」。一軍では代走から出場することも多い。失敗が許されない緊迫した状況下で走るにはそれだけの自信と信頼がなくてはいけない。「刺されないことが一番ですが『小森が刺されたら仕方がない』と言ってもらえるような選手になっていきたい」。22歳のスピードスターはさらなる成長を誓い練習に励んでいる。
「足が評価されて指名されたと思っている」と話す
中島大輔もまた盗塁の技術に関しては驚くことばかりだった。「スタートの切り方やリードでの構え方、そのときの体重の配分など、プロに入ってから学んだことはすごく多かった。プロはリクエストがあるので、コンマ1秒、数センチを争う世界。成功を積み重ねて自分の形を見つけたい」とここまでチーム2位タイの6盗塁。三木野球の申し子となる予感を漂わせている。
若手からベテランまで一人ひとりの意識の高さこそ、盗塁成功率の高さの要因だろう。開幕から約2カ月ではあるが、三木監督の“足攻野球”がチームに浸透しつつある。確固たる武器を手にした楽天の足を生かす多彩な攻撃から、今後も目が離せなくなりそうだ。

足を使った攻撃を積極的に仕掛ける三木監督[右]率いる楽天