
審判規則委員会からの指示を真剣な表情で聞く参加者たち。すべての助言が実戦につながってくる[写真=牛島寿人]
実戦形式から指摘
夏へ向けた毎年の恒例行事。65回目となる全国審判講習会が5月5、6日に
阪神甲子園球場で行われた。
今年は5月5日に「全国高等学校軟式野球選手権大会70回記念 春の軟式交流試合 in甲子園」が行われていたためプログラムは特別仕様。開講式は甲子園に隣接する商業施設の中で行われた。そして軟式交流試合も貴重な実戦の場として有効活用。女性審判委員を含む12人が3クルーを形成し、3イニングずつジャッジした。九州唯一の女性審判員で三塁塁審を務めた松本京子さんは「この雰囲気と言いますか。ここに立つのは誰もができることではないので、それも含めて緊張はありましたね。いつもより頑張って走りました。立ち姿、メリハリは普段からやっておかないとできないんですけど普段以上に頑張りましたね。これが9回できないといけないですね」と振り返った。聖地の土を踏んだことで甲子園の公式戦でジャッジすることへの思いも強くなった。「また絶対立ちたい。9回やりたいですよね」。
軟式交流試合後のプログラムも実戦形式から始まった。協力校の選手たちがそれぞれのポジションに就き模擬試合を実施。参加者は4人1組で1イニングをジャッジした。審判規則委員会副委員長の大槻康彦氏は「今まででしたら全部のプログラムを終えて最後の仕上げで講習の成果を出しましょう、みたいな感じが通例だったんですけど、最初に模擬試合をやって何もこちらは口を出さない。皆さんの普段のままやっていただいて、そこで見つかった課題を以降のプログラムで修正とか改善していこうというのが狙いです」と、意図を明かす。参加者は各都道府県連盟の中でベテランや、将来中心となることが期待されている審判員たち。確かなスキルを持っているはずだが、知らず知らずのうちに基本が崩れてしまうこともある。自分では分からない癖を、第三者が指摘することで気付いてもらう狙いがあった。先に実戦形式という順序は、昨年からの試みで参加者からも好評。1イニングではあるが、甲子園でジャッジができたという充実感につながった。
忘れてはいけない姿勢
今年のテーマは「最後の夏。選手達の最高のシーンに、魂のジャッジを添える!」。主役の選手と同じグラウンドに立つ審判員にはふさわしい姿と心構えが求められる。
「ただ単に判定精度が高いだけではなくて、高校野球の基本があるのでそれに注力していただきたい。中には大学や社会人で審判されている方もいるので、そちらのジャッジをされる方もいらっしゃるんですけど、高校野球らしさを忘れちゃいけないので。駆け足で行きましょう、だったり、高校野球の審判の姿というのがあるので。しっかり止まる。立ち姿もダラっとしない。基本なんですけど高校野球らしさを忘れちゃいけない。それを口酸っぱく言わせていただいています。大先輩方から受け継がれてきた気持ちと形があり、それを引き継いでいかないといけない立場なので、それを伝えさせていただいています」(大槻氏)。
参加者は講習会での学びを、それぞれの地元に持ち帰る。今夏も甲子園を目指す地方大会における高校球児の熱戦に寄り添い、陰から支える。(取材・文=小中翔太)