第96回都市対抗野球大会は全国12地区で二次予選が行われ、推薦出場の三菱重工East(前回大会優勝)を含め、32チームが出場する。本戦以上に予選は「厳しい戦い」と言われており、激戦区・東京の戦いを追った。7月1日から4日連続での代表決定戦。息詰まる攻防が続いた。 取材・文・写真=佐々木亨 
第1代表は鷺宮製作所。逆転サヨナラ3ランを放った薮井は喜びを爆発させた
予想をはるかに超える幕切れとなった神宮で、鷺宮製作所の幡野一男監督(創価大)が男泣きだ。
「どんな状況でも最後まであきらめないというものが、ベンチ全体にあった」。第96回都市対抗野球大会の東京都二次予選。7月1日に行われた第1代表決定戦で、鷺宮製作所が3年ぶり17回目の本大会出場を決めた直後のインタビューでのことだ。
9回裏、1点を返してなおも二死一、三塁と攻めた鷺宮製作所は、一番の薮井幹大(国士大)が打席に立つ。振り抜いた打球は左翼席へ。逆転サヨナラ3ラン。鷺宮製作所が東京ガスを下して東京の第1代表となった。「つなぐ意識でした。結果的にホームランになってよかった」と振り返るのは、入社4年目の右打者だ。社会人となって公式戦初アーチ。サヨナラ本塁打は「野球人生で初めて」。ダイヤモンドを回った時の感情を訊(たず)ねても「あまり覚えていない」と苦笑いを浮かべるほどだ。
「もともと、ホームランを打つタイプじゃないので……」
薮井自身も驚きの一発。熱量がたっぷりと残る神宮にあったその表情は、興奮に包まれていた。
今季の鷺宮製作所を象徴するかのようなフィナーレだったか。春先の東京スポニチ大会では、決勝の9回裏に四番・野村工(拓大)がサヨナラ3ラン本塁打を放って初優勝。あきらめず、貪欲に勝利を求める姿勢を体現した姿は、都市対抗予選でも変わらなかった。幡野監督は言う。
「昨年までの2年間、(都市対抗予選では)負けていましたけど、技術的には手が届かないものではない、そんなに差はないと思っていました。そういう中で、全員で本気で野球と向き合う。特にウチは、そういうものがないと勝てない。今シーズンは、改めて『全員野球』をスローガンに置いてやっています」
野球への愛情を持ち続け、泥臭く、雑草魂のごとく勝利へ執念を燃やす。そんな『サギノミヤらしさ』をチーム全体で表現することができた。就任当初の幡野監督が「全員野球で、みんなが一つとなって戦っていきたい」と語っていたのを思い出す。その言葉が結実した就任3年目の夏というわけだ。
「2年間は苦しかった。でも、この日のためにやってきた」
チームとしては2022年以来となる東京ドーム。現役時代は投手として都市対抗に6回出場した幡野監督にとっては、指揮官として初めて立つ大舞台だ。
「今年の目標は、都市対抗と日本選手権の出場にとどめていました。まずは目先の勝利を目指そう、と。まずは目標を達成したので、ここから目標を軌道修正させてもらいます」
目尻を下げてそう語る幡野監督の目には、すでに涙はなく、3年ぶりとなる大舞台への希望が詰まっているようだった。