第96回都市対抗野球大会は全国12地区で二次予選が行われ、推薦出場の三菱重工East(前回大会優勝)を含め、32チームが出場する。本戦以上に予選は「厳しい戦い」と言われており、激戦区・東京の戦いを追った。7月1日から4日連続での代表決定戦。息詰まる攻防が続いた。 取材・文・写真=佐々木亨 
16年連続出場を決めたJR東日本・濱岡監督はナインの手によって、神宮の杜を舞った
Hondaとは違ったプレッシャーと戦いながら、東京最後の枠を射止めたのはJR東日本である。NTT東日本との第4代表決定戦は、試合の流れが揺れ動く接戦となった。5回裏にルーキーで一番を担う杉崎成(明大)がレフトポール際に同点ソロアーチ。その後も打線がつながり、JR東日本が一気に勝ち越した。6イニング目の攻防で両チームが1点ずつを加え、2点差で迎えた8回裏にも、杉崎成が左翼スタンドにソロアーチを放ってリードを広げたJR東日本が、最後は押し切って勝利をもぎ取る。16年連続28回目の都市対抗本大会出場を決めた。
「楽しんでいこうぜ」
Hondaに敗れた翌日、第4代表決定戦当日にJR東日本の濱岡武明監督(駒大)は選手たちにそう語りかけたという。「勝っても負けても、明るく、元気に」。そんな言葉も加えながら、長らく途切れることがない「連続出場」に挑んだ。
そこには、プレッシャーはなかったか。
濱岡監督は言うのだ。
「OBがつないできた歴史の中で、さらに歴史をつなぐことができることはありがたいことです。プレッシャーはかかりますけど、選手たちには『ここを超えないと、絶対に強くならない』と言っていました。そういう意味でも、最後の第4代表決定戦は『強くするきっかけ』になった試合だったと思います」
昨年に続いての第4代表。今年も崖っぷちを乗り越えて東京ドーム行きを決めたJR東日本の底力を感じる。2年目の古谷龍之介(東北学院大)、ルーキー左腕・
児玉悠紀(青学大)といった若い投手力に期待しながらも、第4代表決定戦で粘りのリレーを見せた
西田光汰(大体大浪商高)、西居建陽(中部学院大)といった経験値の高い投手たちに、濱岡監督は目を細める。最終戦でスタメン出場を果たして、先取点の起点となるヒットを放ち、9回表には濱岡監督が「チームを救うプレーだった」と称賛した左翼での好守があった9年目の
佐藤拓也(立大)の存在も大きい。ベテランと若い力が結束した先に、JR東日本の「予選で勝ち切る」強さがあった。第4代表決定戦で2本のアーチを放った杉崎成が、本音をこぼす。
「もしも今年、本大会に出られなかったら、新人のせいというか……それだけではないのかもしれませんが、チームに申し訳ないという気持ちは正直、ありました」
そんな不安も振り払い、16年連続出場という金字塔を打ち立てたJR東日本は、2011年以来となる黒獅子旗を今年の夏も虎視眈々と狙う。
地力のあるチームがそろう中で、今年も群雄割拠の様相を呈した東京二次予選。4日連続で行われ4つの代表を決める決戦で唯一、敗戦のまま夏の戦いを終えたのはNTT東日本だった。就任1年目の北道貢監督(駒大)は、敗戦後もしばらく三塁側ベンチの椅子に座り、歓喜に沸くJR東日本を見つめていた。
「まずは16年連続で出場しているJR東日本さんに敬意を表して……。そして『すごいな』と。ああいうチームを作りたいと思って見ていました」。昨年は第1代表として東京ドームに乗り込んだNTT東日本とて、簡単ではない都市対抗の予選。熱気が色濃く残る神宮に、その現実を受け止め、前を見据えるチームの思いがあったことも記しておきたい。