第107回全国高等学校野球選手権大会の決勝は8月23日、阪神甲子園球場で行われ、沖縄尚学高が初優勝を遂げた。同校は過去に1999、2008年春のセンバツを制しているが、夏の全国制覇は初。沖縄勢が深紅の大優勝旗を手にするのは、史上6校目の春夏連覇を遂げた興南高以来の快挙である。 取材・文=佐々木亨 写真=毛受亮介、牛島寿人、宮原和也、田中慎一郎 
沖縄尚学高は日大三高との決勝を3対1で勝利。全国3680校3396チームの頂点に立った
三塁アルプスの熱量
指笛交じりの大歓声は、逆に背番号18の心をたぎらせただろうか。大会初登板となった日大三高の先発・谷津輝(3年)は、完璧なまでに1回表のマウンドを支配した。三番にして主将である本間律輝(3年)の右中間二塁打で、日大三高が1点を先制したのは、その直後である。そう言えば、県岐阜商高の69年ぶりとなる決勝進出を阻んだ準決勝を終えて、日大三高の三木有造監督は言った。
「最後はね、気持ちの勝負。(準決勝では)ベンチの中で『心を燃やせ!』という声が聞こえましてね。『良い言葉を言うね』って思ったんです。選手たちがそんな言葉を言っていますね、この大会は」
決勝における初回の攻防には、2011年以来3度目の夏制覇を狙う日大三高の勝利に向かう「心の叫び」があった。
その空気が少しずつ変わっていったのは2回以降だ。四番・宜野座恵夢(3年)の二塁内野安打を皮切りに二死二塁。七番に座る阿波根裕(3年)の左越え二塁打で、沖縄尚学高が同点に追いついたのは2回表である。「(失点した)次のイニングですぐに追いついたのが大きかった」と、試合の流れを語ったのは沖縄尚学高・比嘉公也監督。同点からの先発右腕・新垣有絃(2年)は、今夏も「強打」と表現された日大三高打線に点を与えない。すると6回表、イニングの先頭となった宮城泰成(3年)の右前安打と盗塁で好機を築き、宜野座の左前適時打で沖縄尚学高が1点を勝ち越す。勝てば沖縄県勢として2010年、興南高以来の夏制覇。08年のセンバツで優勝経験があるとは言え、夏は頂点の味を知らない沖縄尚学高を後押しする三塁側アルプスの熱量が一気に高まった。主将の眞喜志拓斗は言ったものだ。
「指笛に大きな声援……沖縄の応援は、試合を重ねるごとにどんどんすごくなっていった。ありがたいです」
8回表、宜野座に再び適時打が生まれて点差が2点になると、甲子園球場は異様な熱気に包まれる。9回裏一死一、三塁。最後はショートゴロでの併殺で、2時間2分の決勝を制した。

日大三高との決勝。8回裏二死一塁の場面で先発右腕・新垣有から背番号1を着ける左腕エース・末吉にスイッチし、2点のリードを守った
比嘉監督は言った。
「選手の頑張りに尽きる。沖縄から
大勢の方が大声援を送ってくれて、選手の力を引き出してくれた」

母校・沖縄尚学高を指揮する比嘉監督は選手[左投手]として1999年春、監督として2008年春のセンバツ優勝を経験。ついに夏の頂を手にした
大会を振り返り、こうも語るのだ。
「初戦(1回戦)の金足農業さんとの厳しい試合(1対0で勝利)をモノにしたことが、甲子園での自信を深めたんじゃないかと思います」
2年連続出場で右腕・吉田大輝(3年)を擁した金足農高に対して、沖縄尚学高の2年生左腕・末吉良丞が14奪三振無四球の完封勝利を手にした。その接戦を経て、チームは本物の強さを手にしていった。

今大会6試合を新垣有、末吉2人で投げ切った
「感謝」を示した日大三高
甲子園の勝利がチームの、そして高校生の力を引き出してくれる。昨夏の甲子園優勝から「勝てない時期があった」苦しみの時を経て、聖地に戻ってきた京都国際高は左腕エース・西村一毅(3年)を中心に8強まで進んだ。同じく昨夏は決勝の舞台に立ち、「甲子園準優勝」の肩書を背負いながら1年間を過ごし、創立100周年の節目に聖地に戻って準々決勝まで勝ち上がった関東第一高。古豪復活を印象づけた県岐阜商高、2年生エース・菰田陽生を中心に躍動した山梨学院高。4強進出の両校もまた、甲子園が育むチーム力を実感したチームだった。春夏連覇を目指して、道半ばの準々決勝で敗れた横浜高もまた、主将・阿部葉太(3年)や左腕エース・奥村頼人(3年)を中心に高校トップクラスの実力を見せた。そして、力が拮抗した第107回大会を制したのが、初優勝となった沖縄尚学高だった。
指笛交じりの大声援が、最後は甲子園球場を覆い尽くした。準優勝に終わった日大三高は試合直後、一塁側に陣取る同校アルプス前に整列して一礼した。その後、外野席へ、そして沖縄尚学高の大応援団がいる三塁側アルプス、さらにバックネット裏の観衆へも一礼した。「感謝の心」を示した日大三高の姿に、4万5600人の大観衆が詰めかけた甲子園球場には、割れんばかりの拍手が広がったこともつけ加えておきたい。