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<週刊ベースボール4000号 記念トークイベント開催!!>梨田昌孝×西村徳文 10.19の真実

 

週刊ベースボールは立大・長嶋茂雄氏が巨人に入団した1958年に創刊された。10月22日発売号で通算4000号を迎える。節目を記念したプロ野球レジェンドによる「週刊ベースボール4000号記念トークイベント」の第3弾が、10月9日に東京都内で行われた。テーマは1988年10月19日、川崎球場で行われたロッテ対近鉄のダブルヘッダーである。
取材・文=上原伸一 写真=川口洋邦

梨田氏と西村氏の現役時代、プレー写真の特大パネル前で写真撮影した


ロッテ本拠地は大観衆


 年間入場者数においてセ・リーグとパ・リーグの開きがまだ大きかった1988年(同年セは約1224万人、パは約827万人)。「パ」の野球を全国に知らしめた伝説のダブルヘッダーがあった。「10.19」。近鉄がシーズン最後の2試合でロッテに連勝すれば、リーグ優勝が決まる大一番だ。ふだんは閑散としていたロッテの本拠地・川崎球場は埋め尽くされた。

「パの試合はあのころ、たまにNHKが放映してくれるくらい。それが民放で全国中継ですからね。関西では視聴率が46%を超えたようです」

 こう回顧したのは今回の登壇者で、当時近鉄の捕手だった梨田昌孝氏。現役時代は強肩司令塔として知られ、ベストナイン3度、ダイヤモンドグラブ賞を4度受賞したほか、「コンニャク打法」からの勝負強い打撃にも定評があった。

「あれだけお客さんが入るのはまれで、気合が入りました」と述懐したのが、当時ロッテの二塁手だった西村徳文氏。現役時代は俊足巧打を武器に首位打者1回、盗塁王4回を獲得した。

 2人にはパ一筋であることと、パの複数球団で監督を務めた共通点がある(梨田氏は近鉄、日本ハム楽天、西村氏はロッテとオリックスの監督を歴任)。なお、進行役は元日本テレビアナウンサーで、実家が当時の近鉄の本拠地(藤井寺球場)の近くだったという上重聡氏が務めた。

約1時間30分にわたり展開された梨田氏[中央]と西村氏[右]によるトークはエピソード満載。進行の上重聡氏[左]が秘話を引き出した


現役最後の打席


 今回のトークイベントの最初のテーマは「決戦前夜」。88年、激動のパ・リーグを回顧した。88年はリーグ優勝10回を誇った南海がダイエーに身売りをした年だが、10月19日、新たな激震があった。阪急の球団経営権がオリックスに譲渡されるニュースが舞い込んだのである。

「ウワサでは聞いていたが、まさか大事な決戦の日に……と驚きました」(梨田氏)。「近鉄の優勝が懸かる日になんで……と残念に思いました」(西村氏)。

 88年はパのペナントレースも後半、大きく動いた。後半戦に近鉄が首位・西武を猛追。「10.19」にペナントの行方が託された。この年のロッテは近鉄に分が悪く「10.19」までに同カード8連敗。「苦手意識がありました」(西村氏)。ただ、高沢秀昭が首位打者に、西村氏が盗塁王になるなど、個の力は決して低くなかった。

「勝てなかったのはチームが1つになっていなかったから。ですが、あの2試合は全員が“胴上げを見たくない”と、束になって戦っていた」

 伝説のダブルヘッダー第1試合。ロッテが4回まで2対0でリード。だが5回に鈴木貴久にソロアーチが飛び出し1点差。「第1試合は9回で打ち切りと分かっていたので、あの本塁打で何とかなるのでは、と」(梨田氏)。それも束の間、ロッテが7回に1点を追加。西村氏は「これで勝ったと思った」と、梨田氏は「絶望的な1点になった」と明かす。

 ドラマの本番は、ここからだった。8回、近鉄は村上隆行の2点適時二塁打で追いつく。引き分けでは優勝はできないなか、9回二死二塁で代打に起用されたのが、同年限りでの現役引退を決めていた梨田氏だった。

「残っていた野手を見ても私しかいないので、出る準備はしていたんですが、仰木彬監督がなかなか代打を告げない。オッサン、早く告げろよと待っていたんですが(笑)、その間に野球を始めた小学生のころを思い出しましてね。これが現役最後の打席になるんだな、と。バットを振らなければ何も起きないので、ファーストストライクから振っていこうと」

 1ボールからの2球目をセンター前へ。4対3。勝ち越し適時打となった。梨田氏は二塁ベース上で、最初で最後のガッツポーズを見せた。「するつもりはなかったんです。スタンドからものすごい梨田コールが起きましてね。それに応えよう、と」。

9分猛抗議の伏線


 第2試合が始まったのは、第1試合終了からわずか23分後。「着替え、トイレ、軽食。実質15分ぐらいしかなかった」(梨田氏)。ロッテにもプロの意地がある。「絶対に、負けない」。西村氏はお祭り騒ぎになる近鉄ベンチを見るたび、あまり気持ちの良いものではなかったという。ロッテ・有藤道世監督も同じ思いだった。

 先制したのはロッテ。近鉄は6回に追いつくと、7回に2本のソロアーチで2点差とした。これで流れは近鉄に傾くかと思われたが、ドラマは続く。その裏、すぐさまロッテがソロアーチで1点差とすると、二死から西村氏が同点適時打を放った。引き分けでは優勝がない近鉄は8回、ブライアントのソロ弾で勝ち越す。「一喜一憂を繰り返していたので、気持ちが追いつかない感じだった」(梨田氏)。だがその裏、第1試合も抑えで登板した頼みの阿波野秀幸が高沢に痛恨の同点弾を浴びた。流れを引き戻したロッテは9回表に三塁手・水上善雄の美技が出る。

 9回裏、無死一、二塁。阿波野は二塁へけん制球を投じると、高めに浮き、大石第二朗がジャンプして捕球。その体勢のまま、二走・古川慎一と交錯しながら触球すると、判定はアウト。このプレーにロッテ・有藤監督は9分にわたる猛抗議。梨田氏は「15〜20分に感じた」。時間の針は進む。第2試合は4時間を超えて新しいイニングに入らないという規定があった。西村氏は今だからこそ「アウトだった」と明かす。

 伏線があった。1回裏。ロッテ・佐藤健一が死球を受け動けなくなった際に、仰木彬監督が「痛かったら、代われば」と声を掛けたと言われる。いち早く、試合を再開させたい思いだったが、選手を預かるロッテ・有藤監督からすれば、納得できない。「スイッチが入りました。中西太さんもヘッドコーチなのに、ことあるたびにベンチから出てくる。もう、バチバチです(苦笑)」(西村氏)。

 遅延行為に映るが、有藤監督からすれば、鬱積(うっせき)したものが爆発。判定は覆らない。この時点で3時間30分が経過。試合は延長へ。10回表の近鉄の攻撃で二塁手・西村氏が巧みなポジショニングで併殺を完成させた。

野球人生の分岐点


 10回表終了時で4時間が迫っていた。その裏のロッテの攻撃が事実上、ラストイニング。近鉄の優勝は消滅した。9回からマスクをかぶっていた梨田氏は「最後の守備につくときは虚しさを感じていた」。4対4。梨田氏は「そこは誇りに思っています。負けなかったからこそ『10.19』は語り継がれていると思います」と言葉に力を込めた。「あれだけ盛り上がっていた近鉄ベンチが……。下を向いて守備に就く姿を見るのは、こちらとしても正直、嫌でした」。西村氏は「野球はこういう雰囲気でやらないといけない」と、近鉄の執念から学びを得た。選手としての優勝の経験はなかったが、2010年にロッテ監督としてリーグ3位からの下克上日本一を達成。梨田氏も「私にとって引退試合。『10.19』が原点。この試合を経験し、もっと野球を勉強し、いずれ監督をやりたい、と。チームを率い、日本一になりたいと思った」と、人生の分岐点に。2001年に近鉄、09年に日本ハムをリーグ優勝へ導き、楽天監督の17年にはクライマックスシリーズの第2ステージ進出。2人はパ一筋の野球人生を歩んだ。

 25年、セ、パの入場者数は史上最多を更新(セは約1460万人、パは約1210万人)。イベント後の取材対応で西村氏が「各球団の努力の賜物」と語り、梨田氏は「私も北海道、仙台を経験しましたが地元密着、フランチャイズ制が確立。喜ばしい限りです」と話した。

 梨田氏と西村氏には「10.19」が、パの野球を変えたという自負がある。今回のイベントには「10.19」を川崎球場で観戦した来場者もいた。37年前にタイムスリップしたような空気が充満していた。

アーカイブ視聴チケット発売中


 梨田氏と西村氏のトークイベントの模様が視聴できる「アーカイブ配信チケット」が10月16日(木)21時まで発売中だ。会場に足を運べなかったファンの方は、ぜひこの貴重なレジェンド同士のトークを体感してほしい。

▽アーカイブ終了日時
2025年10月16日(木)21:00
価格:税込1,500円
※別途手数料がかかります

アーカイブ視聴チケットは下記リンクから▼
https://l-tike.com/sports/mevent/?mid=760785

<好評発売中!!>松坂大輔×和田毅が語る「奇跡の松坂世代」


【日時】2025年11月17日(月)
    17時30分開場 18時30分開演(20時・終演予定)
【会場】銀座ブロッサム中央会館
【ゲスト】松坂大輔 和田毅
【MC】上重聡
◆会場チケット 料金:8,500円(別途手数料がかかります)
◆配信チケット 料金:2,000円(別途手数料がかかります)
【視聴期日】 当日〜2025年11月24日(月)23:59まで
【購入期日】 2025年11月24日(月)21:00まで
※購入するにはZAIKOの会員登録(無料)が必要です
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