晩秋の日差しが温かく阪神と約20万人のファンを包み込む。11月22日に大阪市内で優勝パレードが開催された。その中で、声援に笑顔で答える背番号5がいた。FAの権利を得ながら、期限ぎりぎりまで悩み、そしてFA宣言をせず、残留を決めた。この日が残留宣言後初のファンと触れ合う場でもあった。今季残した課題をクリアするため、ファンとともに、球団初の連覇と日本一へのリベンジを誓った。 写真=毛受亮介、BBM 
11月22日の優勝パレードで、約20万人のファンが集まり、全員が笑顔で1年を締めくくった[写真=主催者提供]
2023年日本Sでの忘れ得ぬ体験
2020年新型コロナ禍、パンデミックの中で無観客試合が行われた。「観客がいないと打球音もはっきり聞こえるし、守りやすいのではないですか」と聞いたことがある。
近本光司はこれを全否定した。
「打球音が聞こえることよりも、お客さんからもらえるパワーがもらえないことのほうが不安ですね。声援が僕の力になりますし、それがないのはモチベーション的に難しいですよ」
3年後、2023年11月1日、日本シリーズ第4戦。
オリックスと接戦で9回裏に入り時間は22時を迎えようとしていた。22時を過ぎると鳴り物の音が禁止され、声だけの応援となる。同点で迎え一死から打席に入った近本は四球を選ぶ。オリックスのリリーバー、
ワゲスパックは二番・
中野拓夢の打席で2度のワイルドピッチ。近本は三塁まで進塁した。
オリックスベンチは、中野と続く
森下翔太を連続敬遠とし、四番・
大山悠輔との勝負を選択した。このとき時刻は22時を過ぎた。三塁上にいた近本は「この瞬間から、統率の取れていない声がいろいろなところから飛び交い、それが一つの塊のようになって、内外野から銀傘に反響し、グラウンドに跳ね返ってきたんです。今まで味わったことのない、地響きのような音が、三塁走者の僕の体の中に入ってきました。毛の穴が開きまくって、鳥肌が立ちまくり、めちゃくちゃ震えました」と回想している。
このときに、ほかのどのチームでも経験できない声援を受け、それが思い描いていた以上の力になることを実感した。近本自身、センターのポジションで各チームの声援、応援を聞いて楽しんでいるが、やはり、この日本シリーズの声援は、何物にも代えがたいものだったとも語ってくれた。それ以降の近本は、常にクールな面を見せつつも、喜ぶときは心の底から喜んでいる。日本一の経験でファンへの思いがより一層強まった。
努力で得た権利との狭間で
今季プロ野球で活躍した証しでもある国内FA権を取得。昨年の契約更改では球団からの複数年提示を拒否し、単年で契約を結んだ。まずは今季、優勝を目指し走り抜け、その後じっくり考えて自分がどうしたいのかを考え抜いた。1週間考えての、FA権を行使せずの残留だった。
世間的には淡路島出身で、高校から社会人まで兵庫県を中心とした関西圏のチームに所属していたことで、阪神を離れる理由はないと見られていた。だが・・・
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