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ショウワコーポレーションが新体制 クラブから企業チームへ 企業指針は「信頼と挑戦」初年度から都市対抗制覇が目標

 

2025年11月20日、岡山県美作市を拠点に活動する社会人野球チームであるショウワコーポレーションが、26年シーズンから始動する新体制発表会見を開いた。目指すは都市対抗制覇。チームビジョンは明確だ。
取材・文・写真=井上幸太

ショウワコーポレーションは1994年に「柵原クラブ」として発足以来、クラブ登録で活動し、2023年には全日本クラブ選手権優勝を遂げた。26年からは企業登録へと進化を遂げ、野球部としての強化体制も本格化した


豪華布陣の実現に尽力


 合言葉は「美作市から全国へ」。大願成就へ、並々ならぬ覚悟を感じさせる豪華布陣である。

 新監督に就くのは、名門・パナソニックを率いた経験を持つ奥代恭一氏(関大)。新指揮官の右腕となるヘッドコーチには、昨秋まで神院大の監督だった伊与田健吾氏(神院大)が就任する。アマチュア球界の第一線を張った中核2人もさることながら、脇を固めるコーチの顔ぶれには度肝を抜かれた。

 投手コーチには、幾多の好投手を育てた尾花高夫氏、打撃コーチには、プロ通算2055安打を放ち、複数球団で指導を経験している加藤秀司氏。選手のケアとフィジカル強化を担う部門でも、チーフトレーナーに松元隆司氏、ストレングス&コンディショニングコーチには赤川貴弘氏という、ともにNPB球団での活動歴を持つ腕利きを招へいした。

 奥代監督が「監督の私自身がワクワクするスタッフ陣」と胸を高鳴らせれば、同席した美作市の萩原誠司市長も、「クレバーで、力があって、情熱にあふれている方々。この年末に、大きなプレゼントを美作市にしていただいた」と興奮しきりだった。

 質疑応答で、同社の有元稔代表取締役に「体制刷新の意図は」の質問が飛ぶと、同氏は迷いなく回答した。

「我々、ショウワコーポレーションは(会社として)第28期を走っております。ぜひ30期までには都市対抗に出場して、その上でてっぺんを獲りたい思いがあります。そのために、この体制があります」

ショウワコーポレーションの有元代表取締役は30期までの約2年で結果を出すことを目指している


 会社が30期を迎えるまでの約2年間で、都市対抗初出場を叶える。そのための“勝負手”である豪華布陣の実現に尽力したのが、25年シーズンに加入した米村理GMだ。

 米村GMは、古巣であるオリックスなどプロ3球団で約30年間コーチを経験。数多くの野球人を目にした上で「一番野球が好きな人、各部署の日本一の人に声を掛けた」。

 就任初年度の25年は、22年から指揮を執る亀澤恭平監督(元中日ほか)が中心だった前体制を間近で見守った。23年には都市対抗と並ぶ二大大会である社会人日本選手権に出場。昨シーズンは都市対抗の中国地区二次予選に進出するなど、一定の結果を残していた中での大幅刷新も、次へのステップへ向かうには、避けて通れない道だった。体制変更の影響で、25年からの残留選手は、3人にとどまる。だが、米村GMの意志は揺るがなかった。

「今までも、すごくいいチーム。『作り変えるのはもったいない』という声も分かる。でも、ある程度出来上がったものに、それ以上のものは乗っからない。土台が違うから。日本一を目指す以上、更地から作り直さないといかんということです」

その世界を熟知した人材


 プロの球界でも重鎮と呼ぶべきコーチ陣にあって、奥代監督を新指揮官に起用したのも、米村GMの強いこだわりだ。2人は同学年で、高校時代から面識がある盟友。奥代監督がパナソニックを率いた14年には、米村GMに臨時コーチを依頼するなど、強固な信頼関係があった。

「奥代監督は、僕以上に野球が好きなヤツ。だから任せられる。変わったヤツですけどね(笑)。社会人の勝ち方を知っている。一死二塁で、僕ら(元プロ)はバントできない。でも、彼はしますよ。三塁に進めて1点を取りにいく野球ができる」

 観客に“魅せる”興行であるプロ野球と、一投一打に部の存続がかかりかねない社会人野球。泥臭く勝ち筋を探す必要のある社会人球界で上に行く、目標である都市対抗出場、優勝を実現するには、その世界を熟知した人材が最適という考えだった。

 奥代監督は、15年にパナソニックの監督を退任したのを機に、「もう、野球は終わりにしよう」と野球から一線を引いていたが、旧友の熱い誘いで一念発起。「目標は都市対抗優勝。初年度から狙います」と意気込む。

 才気と情熱にあふれるスタッフ陣だが、伊与田、赤川両コーチを除く面々は60、70歳代。体力面の不安や、多方面に影響力のある人材だけに、チーム外の活動が多忙なケースも考えられる。米村GM曰く、元プロのコーチたちは「1カ月の約半分」指導に訪れる形式を想定しているという。これは、長く指導現場に立って芽生えた仮説に基づいている。

「ずっと見られていると、選手はしんどいんです。伸びない。コーチもずっと見ていたら、逆に見えない部分が出てくる。だから、月の半分は加藤さんや尾花さんのすごい技術を吸収して、残りの半分は自分で考える。実は、プロのコーチだったときから、こうしたら伸びるやろなと思っていた理想の形なんです」

 奥代監督とスタッフ最年少の伊与田ヘッドコーチがグラウンドに常駐し、一発勝負の社会人野球に不可欠なマインドを植え付ける。元プロのコーチたちは、選手が欲するタイミングで一流の技術を授ける。アマとプロの強みを掛け合わせ、かつてない成長曲線を描き出す。

米村GM[右]と奥代監督[左]は同学年で、高校時代から面識があり、強固な信頼関係がある


登録変更の理由


 刷新されるのはスタッフ陣だけではない。1994年に「柵原クラブ」として発足以来、一貫してクラブチーム登録で活動してきたが、26年シーズンからは企業チームに生まれ変わる予定だ。クラブチームは、クラブ日本一を決める「全日本クラブ選手権」に挑戦ができ、ここで優勝すれば、社会人日本選手権の出場権が得られる。23年の日本選手権初出場は、クラブ選手権を制してつかんだものだった。米村GMが、メリットを手放してまで登録変更に踏み切る意図を明かす。

「クラブチームであることで、(企業相手に)一歩引いてしまうところがある。日本一を目指す以上、もう一つ上のレベルでやりたいなと、有元社長にお願いしました。『クラブ選手権で優勝して、日本選手権に出よう』ではなくて、予選から出て勝ち上がろうと。都市対抗出場、日本一は甘いものではないと思うので」

 企業チーム登録には20人以上の選手が必要だが、新卒の選手が数多く加入し、その条件をクリアできるという。会見の時点で個人名は明かされていないが、「体は小さいけど、キレがある選手が集まった」(米村GM)。こちらにも期待が高まる。

 物流、広告、食品、不動産など事業が多岐にわたるショウワコーポレーションが掲げる経営指針は「信頼と挑戦」。絶大な信頼を寄せられるスタッフの下、新たな挑戦が始まる。
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