
7回二死二塁の場面で西武・平沢大河をセカンドフライに打ち取り感情をあらわにした前田健。気迫の投球で11年ぶりの日本での勝利をつかんだ
日本球界復帰後初勝利を
楽天モバイルで達成した
前田健太はお立ち台で目を潤ませた。
「なかなか勝てなかったので、今日という日はすごく大切な日になりました」
6月25日の西武戦で7回3安打、無四球無失点とテンポのいいピッチングで、ようやく手にした1勝。日本では
広島時代の2015年10月2日の
中日戦(マツダ広島)以来3919日ぶり。今季7度目の先発マウンドだった。
「なかなか勝てなくても本当に熱い声援をたくさんくださったので、とにかくイーグルスのために全力で全身全霊をかけてたくさん勝利に貢献できるように頑張っていきたいと思います」
クリムゾンレッドの『18』を背負って迎えた11年ぶりのNPB復帰戦はホーム開幕となる3月31日の
ソフトバンク戦。そこから二軍調整する時期もあり、焦りや不安が募る中で見つけた答えは“原点”だった。「僕はコントロールで戦ってきたピッチャー。自分のピッチングスタイルを見直してきた」と投球フォームなどを修正。すると「疲労感は特に感じなかった」と今季最多の7回114球。本来の姿を取り戻したベテラン右腕は「まだ1勝ですし次の登板もあるのでしっかり気持ちを切り替えていきたい。ただ、前向きに調整はできると思うのでそういう意味ではいいきっかけになればいいなと思っています」と充実した表情で次回登板を見据えた。
前田健と同様、6月17日に就任した
吉井理人新監督にとってもメモリアルな1勝となった。本拠地での初勝利に加え、監督通算200勝目。さらにチームは今季初の同一カード3連勝となった。

6月25日の西武戦に勝利し、前田健とハイタッチする吉井新監督。6月22日の初勝利から4連勝するなどチーム状態は少しずつ上向いている
変化が感じられたのが選手起用だ。「『思い切って若い選手でいこうよ』と言ってくれたりもする」と
久保裕也投手コーチが明かしたように、特に救援陣は重要な局面でも若手を積極的にマウンドに送った。就任後初勝利となった6月22日の西武戦(東京ドーム)では1点リードの8回にドラフト6位の
九谷瑠、同点の11回にはドライチ・
藤原聡大を起用した。ともに痛打を浴び逆転を許すも野手が奮起し同点に追いつき、12回には2年目の
中込陽翔が気迫の投球で三者凡退。その裏に
黒川史陽がサヨナラ打を放ち、中込にはプロ初勝利が舞い込んだ。

6月22日の西武戦[東京ドーム]でプロ初勝利を挙げた中込。「いい場面で名前を呼んでいただいてありがたい気持ちと期待に応えたいなという気持ちでマウンドに上がりました」
久保投手コーチは「ビハインドの展開で投げるより緊張感もあるし、1点勝っている状況でマウンドに向かうことで責任感も生まれる。成長の観点から考えてもどういう状況で投げさせるかは経験値としてすごく大きなこと」と語る。さらに「ブルペンの準備に関して球数とかをしっかり管理しながら『頻繁に肩をつくらせなくていいよ』と言ってくれる。選手の登板状況を見て『今日はできるだけ投げさせないようにしよう』という提案もあり、リリーフに対してすごく配慮してもらっている」と続けた。
休養の重視は投手に限らず野手でも見られる。6月19日には開幕から全試合スタメン出場していた
村林一輝、6月27、28日にはレギュラーをつかみつつあった好調の
佐藤直樹をスタメンから外した。打順も入れ替えるなど選手の状態とバランスを考えた起用が増え、育成と休養を取り入れながらチームで勝利を目指すスタイルは吉井政権の序章が始まったことを感じさせる。
だが育成に舵を切ったわけではない。「パ・リーグを盛り上げるためには上位をやっつけていく。野球ファンが喜んでくれると思うのでそこは必死にやっていきたい」と指揮官。パ・リーグの順位争いを面白くさせるのは吉井楽天かもしれない。