補強選手は都市対抗独自のルールだ。代表チームは、同地区の予選で敗退したチームから“助っ人”を招き入れる。同枠をうまく活用したチームが勝ち上がる傾向もある。東京ドームでの貴重な経験を自チームへと持ち帰る。 取材・文=佐々木亨 ※日立製作所から補強 
日本生命との2回戦では2、3回に2打席連続本塁打を放った。写真は3回裏の2本目[写真=矢野寿明]
メジャー・リーガーのまね
右肘を張り、前かがみで構える独特の打撃フォームは、さながらメジャー・リーガーのようだ。胸郭をうまく使いながら、空振りを恐れないフルスイングが持ち味だと話す金原塁(大商大)は、打者としてのイメージを「
マイク・トラウト(エンゼルス)です」とも語る。上体を起こしてリ
ラックスした構えから始動する打撃フォームを見直し、現在形となったのは今年。日立製作所に入社して2年目を迎える3月のスプリングキャンプからだという。
「圧倒的な打球速度を出すために、トレーナーさんと相談して考えました。『メジャーが好きだ』と言ったら、『メジャー・リーガーのまねをすればいい』ということで今の打撃フォームになりました」
ガラッと変えてみたその日、キャンプ地で行われた沖縄電力とのオープン戦で本塁打を放った。変化球をとらえた打球が左翼スタンドに吸い込まれた。「ハマった」。金原は、その先の活躍を確信した。
都市対抗ではエイジェック(小山市)の補強選手として躍動した。沖縄電力(浦添市)との1回戦では四番を務めた。試合中盤に足がつって途中交代を余儀なくされたが、続く日本生命(大阪市)との2回戦では、磨き上げてきた打撃の成果を見せつけた。まずは2回裏に巡ってきた第1打席だ。左翼スタンドの2階席に飛び込む超特大のソロアーチを放つ。
「(イニングの)先頭だったので、とにかく出塁することを考えて打席に立った」
自身の思いをはるかに超える先制弾は、続く3回裏の第2打席でも良いイメージをもたらした。1打席目と同じような弾道で左翼スタンドに打球が吸い込まれる。チームを勢いづける3ランだった。
1試合2本塁打は、今年の都市対抗野球茨城県大会決勝の日本製鉄鹿島戦以来、自身2度目のことだった。ともに「ジャイロ回転で落ちてくる、おそらくチェンジアップ」と振り返る変化球をとらえた左翼スタンドへのアーチは、打撃フォームを変えたその日に放った一発と同じような弾道だったと言う。わずかに体勢を崩されながらも、下半身の粘りで力強くスイングできた打撃を「今シーズンは下半身を意識した打撃を求めてきたので、成果として出て良かった」とも金原は振り返るのだ。
重圧を楽しさに変換
東邦ガス(名古屋市)との準々決勝では、タイブレークの延長10回裏に中前へのサヨナラ打を放った。
「本当なら出場できなかった大会。出場機会をいただいたエイジェックさんには感謝しかありませんし、こうして呼んでいただいたことは自分自身の自信にもなった。楽しんでプレーができています」
日本生命との試合後にそう語っていた金原は、大会を通じてその言葉を体現し続けた。エイジェックとして初の4強進出の原動力になり、大会期間中は「今は都市対抗で優勝することだけを考えている」と言い、プロへの思いを封印してバットを振り続けた。補強選手として勝利のために戦い続ける中、ドラフト解禁年である大卒2年目で放った極上の輝き。それは、この先の野球人生に大きな光をもたらすものだった。
PROFILE かなはら・るい●2002年8月5日生まれ。宮城県出身。179cm90kg。右投右打。松山小1年時から松山シャークスでプレー。松山中時代は宮城大崎シニアでプレーして捕手。クラーク国際高では、捕手や内・外野をこなしながら活躍。大商大では主に一番打者を担い4年春のリーグ戦では打率.321。日立製作所では長打力を磨き、2年目の第97回都市対抗野球大会にはエイジェックの補強選手として出場。4強進出に貢献し、外野手部門で優秀選手に輝いた。