東京ドームで繰り広げられたトーナメントの一発勝負。1回戦から決勝まで、全31試合が展開され、今年も名勝負の連続であった。黒獅子旗を目指し、社会人野球にかける一途な思い。 取材・文=佐々木亨 写真=高野徹 
東海理化はJFE西日本との2回戦で敗退。3年前の8強に並ぶことはできなかったが、チームとしての確かな成長を感じた
「9.6」を照準に
都市対抗で5試合を戦い抜き、主将の武藤健司(中部学院大)が黒獅子旗を手にする。そのストーリーを思い浮かべ、実現に向けた本気の取り組みは確かにあった。都市対抗の開幕を目前にして、武藤は「早く試合をやりたい」と言い、こうも語っていたものだ。
「いまは、確かなチームの方向性と一体感があります」
東海理化(豊川市)は、昨年から「Design Baseball」を取り入れた。要するに、チームが思い描く未来の姿から逆算して、戦い方や組織づくり、日々の取り組みを「デザイン」する考え方だ。理想の姿、いわば目標を選手やスタッフで共有する。その思いを一人ひとりが強く意識して、体現しながら前へ進む。今シーズンは、9月6日(都市対抗決勝日)を日本一になる日と定め、そこから逆算して日々を過ごした。
2年ぶりにたどり着いた東京ドームだった。12年ぶりに出場した2023年の第94回大会では、1970年の都市対抗初出場から53年越しに初勝利を手にして8強まで勝ち進んだ。もちろん、その軌跡を超える。東海理化の思いは一つだった。
チームの成長を実感
1回戦で日本製鉄かずさマジック(君津市)を8対4で下したチームは、2回戦でJFE西日本(福山市・倉敷市)と相対した。1回表、三番を担う川上承太郎(名古屋市工高)が左翼スタンドに飛び込むソロ本塁打を放つ。川上は「カットボールが甘く入ってきて、うまく反応で打てた」と先制弾を振り返る。その直後に逆転されたが、2回表にはJR東海からの補強選手である平野英丸、続く齋藤導久(ともに駒大)の連打でチャンスメーク。中野良紀(愛工大名電高)の一塁ゴロの間に1点を奪って同点とした。
劣勢になっても、誰一人としてあきらめない。それこそが東海理化の強みであり、就任5年目を迎えた山根直輝監督(上武大)の下で変化を続けるチームの成長でもある。
「勝てる」「勝ちたい」。選手の誰もが本気でそう思い、東京ドームでプレーした。だが、最後は僅差で敗れた(2対4)。黒獅子旗を狙う歩みは道半ばで止まり、今夏の東海理化の挑戦は終わった。山根監督は言う。
「選手は持っている力を出し切ってくれたと思います。もう一回、この敗戦を踏まえて出直したい。良かったところと課題を見つめ直してやっていきたいと思います。ただ、チームは一歩一歩、成長しています。練習から東京ドームで勝つことを意識して、一球一球に思いを込めてやっている。そこは、これからも継続してやっていきたいと思います」
先制弾を含む2安打と気を吐いた川上も、悔しさをにじませながら前を見た。
「昨年は東京ドームに来られず、そこから1年間、東京ドームで戦うことをイメージしてやってきた。その中で、チームの誰もが『日本一になれる』と本気で思っていました。やってきたことは、間違っていない。負けてしまい、悔しい気持ちは大きいですけど、この経験を生かしながら、来年も日本一という目標に向かってやっていきたい」
その思いが成就される日は、そう遠くはないような気がする。