今季くすぶり続けた疑念に、一つの答えを出した。広島が、指定薬物エトミデート(通称・ゾンビたばこ)使用を巡り、関与が取り沙汰されていた選手4人に戦力外を通告。ただ、失われた信頼の回復へはまだ時間がかかりそうだ。 
戦力外通告を受けた広島・小園海斗[写真=BBM]
昨季2冠の有望選手も
この時期の戦力外通告の発表は例年どおりだが、その内容はあまりに異質だった。広島は10月1日、内野手の小園海斗(26)、
矢野雅哉(27)、
前川誠太(23)、外野手の
田村俊介(23)と来季の契約を結ばないことを発表した。小園は2025年に首位打者と最高出塁率の2冠を獲得し、今年3月のWBC日本代表メンバーにも選出された。矢野は24年にゴールデン・グラブ賞(遊撃手)を受賞。将来の主力として期待された若手を含む20代の4人に対する突然の重い決断は、球界や野球ファンに衝撃を与えた。
今年1月に球団の
羽月隆太郎元選手が指定薬物の使用で逮捕されたことに端を発する問題。今回通告を受けた4人は、これまで球団が行ってきた調査で、指定薬物の使用は確認されていない。鈴木清明球団本部長は「白か黒かと言えば、白」との認識を明かしつつ「球団との信頼関係を築くことが難しいと判断した」と説明した。
1日、マツダスタジアムに姿を見せた4人はそれぞれ報道陣の取材に応じた。小園は「信頼できないと言われたので。仕方ないのかなと思います」と受け止め、矢野は「僕の軽率な行動でファンの方々や球団関係者の方々にご迷惑と心配をかけて、申し訳ない気持ちです」と謝罪。前川と田村も反省とファンや関係者への謝罪を口にした。「野球はできるなら、やりたいです」と語った小園をはじめ、4人とも現役続行を希望している。
激動の今季を経て
広島にとって、薬物問題が常について回るシーズンだった。昨年12月に羽月元選手が警察に任意同行、その後の尿検査でエトミデートの陽性反応が出た。逮捕の一報が入ったのは、春季キャンプ直前の1月27日だった。その後起訴され、初公判で執行猶予付きの有罪判決に。7月には一部週刊誌が、羽月元選手に薬物を譲渡した容疑で逮捕された都内在住の会社役員の男が小園、矢野、田村と会食の場で同席していたとする写真などを配信した。
同30日には球団が、矢野と前川が広島県警による家宅捜索を受けたと発表。9月25日には両選手が書類送検された。小園は試合で拙守が目立ったことなどから8月18日に登録抹消。5月下旬から二軍でプレーしていた田村も含め、二軍公式戦には出場していた。
球団による調査結果などの説明が乏しく、時間を置いて週刊誌報道で新事実が明かされる展開に、ファンの不信感も募った。早い段階での戦力外通告という決断で一つの答えは出した形だが、球団としての信頼回復はこれからと言える。加えて、今回の対応でチームの戦力ダウンは免れず、求心力の基本である“強さ”に、これまで以上に向き合っていく必要もある。
通告を受けた4選手の今後も注目される。広島の
新井貴浩監督は1日、「子を持つ親として、彼らのことを考えると苦しくなる。応援してくれていた方々には温かい目で今後、見守ってあげてほしいなと思います」とコメント。社会や組織におけるコンプライアンスの問題とともに、信頼関係の在り方が問われている。
【広島・ゾンビたばこ問題の経緯】 ■2025年12月16日
広島県内で110番を受けて警察官が向かった先に通報者と羽月元選手がいて、任意同行。尿検査でエトミデートの陽性反応が出た
■2026年1月27日
羽月元選手を医薬品医療機器法違反(指定薬物の使用)の疑いで逮捕。29日に身柄が送検された
■同1月30日
広島県警がマツダスタジアムと大野練習場を家宅捜索
■同2月6日
羽月元選手がエトミデート使用を認める供述を始める
■同2月17日
広島地方検察庁が羽月元選手を薬機法違反の罪で起訴
■同2月24日
広島が羽月元選手の契約解除の処分を決定
■同5月15日
羽月元選手の初公判。即日結審し、拘禁刑1年、執行猶予3年の有罪判決。「周囲にも吸っているカープの選手がいた」と証言
■同6月1日
広島県警がエトミデートを羽月元選手に譲渡した疑いで都内在住の会社役員の男を逮捕
■同7月13日
一部週刊誌が小園、矢野、田村と逮捕された会社役員の男らが同席する写真などを配信
■同7月17日
広島が矢野の出場選手登録を抹消
■同7月30日
広島が、矢野と前川が広島県警の家宅捜索を受けたと発表。前川の出場選手登録を抹消
■同9月25日
広島県警が矢野、前川を書類送検