高い身体能力に加え、球界でも希少なスイッチヒッター。カモメの斬り込み隊長として名乗りを挙げている加藤翔平にとって、右打席での自分と左打席の自分は、それぞれ違う1人のバッターだという。そのこだわりはバットへのカスタマイズにも表れている。
取材・文=杉浦多夢、写真=松田杏子


「右打席と左打席でバットは使い分けています。右バッターと左バッター、1人ずつ自分がいるような感覚なので」

　カモメが誇るスイッチヒッターは“2本のバット”とともに“2人の自分”を磨きながら、レギュラーの座へ着実に近づいている。加藤翔平の2本のバットのうち、今季から大きな変化を遂げたのが左打ち用だ。昨季までの僚友・デスパイネ(現ソフトバンク)のモデルをベースにカスタマイズを施した。「左打席ではしっかりヘッドを使いたい」という加藤にとって、トップヘビーのデスパイネのバットはイメージに合致したものだった。ただ、デスパイネのバットは「ヘッドに重心があり過ぎて、重かった」ため、ヘッドをくり抜き、重量を900グラム弱まで軽くしている。さらにグリップも細くすることで「しっかりギュッと握れる。今はこのグリップでしっくりきている感じですね」。


　昔からの自分のバットにより近いのが右打ち用のバット。左打ち用より太めのグリップで、グリップエンドはタイ・カッブ型。「坂本(坂本勇人、巨人)さんの形がモデル」と言うが、やはりヘッド部分を・・・