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道具の流儀 2018

ソフトバンク・中村晃 SSKのバット もっと遠くへ──バットを進化のきっかけに

 

ソフトバンクが誇るバットマンが、自らの相棒にフルモデルチェンジを施した。もっとボールを遠くへ飛ばすために、さらなる打撃の進化を追い求めるために。2018年、その成果は着実に表れ始めている。新たなバットを手にした、中村晃のバッティングを見逃してはならない。
取材・文=杉浦多夢、写真=湯浅芳昭


 鷹の打撃職人にさらなる覚醒の予感が漂っている。中村晃がバットを替えたのは昨シーズン途中のこと。それまでは「シーズン中にバットを替えたり、ほかのバットを試したりということはあまりなかった」というが、思い切った決断を下した。

「あまり数字も残していなかったので、替えやすい状況ではありました」と振り返るように、昨季は思うように成績がついてこなかった。シーズン143試合にフル出場し、チームの日本一奪回に貢献したという思いはあっても、レギュラーに定着した2013年以降では最低の打率.270に終わってしまったのは事実だった。

 求めたのは強い打球だ。以前から「長打を打てるバッターになっていきたい」という思いは抱えていた。ただ、自分のスイングというものは変わらない。だったらバットを替えて、復調と進化のきっかけになればと考えた。

 ベースになったのは川島慶三のバットだ。「慶三さんとはロッカーが隣りで、たまたまバットを握らせてもらったら振りやすいなと思って。スイングするとちょっと重さは感じましたけど、打感というか、打球が飛んでいく感じがすごくいいなと思いました」。

 これまでは操作性を重視して手元寄りにあった重心を少し先へ移し、ヘッドがより利くようにした。グリップを細くし、ヘッドもくり抜いて重量を調整するなど、まさにフルモデルチェンジを施した。

長さは33.5インチ、重さは900グラム前後と前モデルから大きな変化はないが、重心の位置や形状などは大きく変えた


ヘッドをくり抜いて重量を調整している


 さらにはバット自体も長く握るようになった。今でも1打席ごと、1球ごとに、「状況や自分の感覚に応じてグリップを握る位置は微調整している」というが、基本的な握る位置自体を大きく変えたのだ。「最初は差し込まれるんじゃないかという怖さがあった」が、徐々に体になじみ、今では何の違和感もなく今シーズンを迎えることができている。

 手応えはある。打撃練習ひとつをとっても明らかにボールが飛んでくれる。そんな実感が試合でも表現されたのが4月1日のオリックス戦(ヤフオクドーム)。6回一死満塁で山岡泰輔の5球目を振り抜くと、打球はあっという間に右翼席最前列へと突き刺さった。自身プロ初となる満塁弾でチームを勝利に導いた。開幕直後は決して打撃の状態が良かったわけではなかったが、「悪いなりにもああいう打球が出るというのは、これまでは僕の感覚の中ではなかった。いい方向にはいっているのかなと思います」。

 4月15日のロッテ戦(鹿児島)では12試合目にして早くも2本目の本塁打が飛び出した。しかも昨季は1本もなかった左方向への一発。持ち前のバットコントロールを取り戻すだけではない。その先へ。新たなバットを自分のものにした中村晃にとって、さらなる進化を見せつけるシーズンになりそうだ。


PROFILE
なかむら・あきら1989年11月5日生まれ。176cm84kg。左投左打。埼玉県出身/帝京高-ソフトバンク08=11年
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