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豊田泰光のオレが許さん!

WBCフィーバーは変だぞ

 

今回の日本代表の雰囲気は08年の北京五輪のときになんだか似ている


 スポーツ紙は、まあ、よく飽きもせず(?)WBC、WBCと連日1面トップで大騒ぎしていますが、この盛り上がり方はなんか妙ですよ。オレはね、08年の北京五輪の星野ジャパンを思い出してしまいました。

 あの時は、仙ちゃん(楽天・星野監督)もマスコミも、「金、金、金!」と大騒ぎだった。金メダルを取れなきゃ切腹もの、みたいな雰囲気になっちゃっていた。あんなに自分を追い込んでしまったら、野球をやれなくなるよ、とオレは心配したものでした。そして、案の定……。

 山本監督はコーチとして、その苦い体験があるから、初めは静かにスタートしたけど、いつの間にやら「V3、V3、V3!」の、のっぴきならない状況に追い込まれてしまった。WBCは投球制限その他、野球であって野球でない面が大いにあるのですから、もう少し、対象を突き放して距離を取って冷静に見ればいいのに、V3と日本代表の距離はゼロになり、それしか見えなくなっちゃっています。2月20日付のスポニチ(東京版)の1面は、広島の前田健の右肩に問題があるのに、代表に入れる(20日に選出)、というものでしたが、V3しか見えなくなっちゃっているからこうなる。

 前田健の本業はペナントレースで勝つことでしょうが。そこを間違ってほしくない。 オレが思うにね、V3、V3、V3というお題目の陰には「負けたらどうしよう」「負けるのが怖い」という心理があるんですよ。こういう心理のもとでの戦いはつらいですよ。というかつまらんですよ。

 アメリカ代表の監督は、あのヤンキース時代の松井の恩師、トーリ監督ですが、エース級2人に直前で辞退されて彼は困っちゃっているという記事がありました。そういう大会なんです。もう少し冷静になった方がいい。

 山本監督と日本代表の諸君はね、「V3」というお題目を捨てて「甲子園」を思い出した方がいいんです。甲子園の勝者は、全国何千校の中のたった1校なのです。甲子園の戦い、甲子園を目指す戦いは、負けるためにやるようなものですよ。でも、球児たちは、その負けに挑む。それはね、最後に負ける試合に至るまでの過程が素晴らしいからです。ここには「負けたらどうしよう」「負けるのが怖い」という心理はありません。もちろん、負けたら悔しいですよ。悔し涙が止まりませんよ。でもね、この悔し涙こそ、自らの野球人生の中で最も尊いものなのです。

WBC日本代表の山本監督も、広島・廿日市高校で甲子園を目指したころを思い出せば、何かをつかめるのでは?



 日本代表は、甲子園で活躍した人、甲子園に届かなかった人、さまざまでしょうが、最後の負けに至るまで、どれほどの人にお世話になっているか、考えたことがあるでしょうか・・・

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