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井上一樹 コーチ #99

受け継がれるイズム

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 昨季は球団史上初の連覇を成し遂げたとはいえ、球界史上初の「リーグ最低打率&最少得点チーム」の優勝でもあった。現役時代は3度の三冠王を誇る落合前監督が8年間鍛え抜いても、作り上げることができなかった“強竜打線”。ところが、今季のチーム打率はリーグトップの.252(6月1日現在)。中日といえば、強力投手陣に目が行きがちだが、途中経過とはいえ前年比2分4厘アップは首位快走の原動力と誇っていい。「力のある選手、経験豊富な選手がそろっているわけですから。去年が打てなさ過ぎたんですよ」

 井上一樹コーチはこう話す。二軍監督からの配置転換とはいえ、レギュラークラスのほとんどは現役時代に苦楽をともにしてきた仲間たちだ。「配慮はしても遠慮はしない」が口癖。昨季まで指導してきた若手選手ともなれば、妥協なきスイング量を課す。そこには下積みを経験した自身の若手時代が投影されている。「僕が恩師と呼べるのは星野(仙一)さん、高木(守道・現監督)さん、島谷(金二)さん、そしてじっちゃんですね。とにかく振る力をつけてもらった。追っ掛け回されて、それでも振りました。つらかったけど身になりましたから」

 それぞれとの関わりはここでは割愛するが、打の師と仰ぐのは「じっちゃん」こと水谷実雄・元打撃コーチだ。投手として入団し、5年目に野手転向した井上コーチ。スタートが遅れた分、人の何倍も振った。もちろん技術に裏打ちされ、愛情が伴った上での猛練習。平田や大島ら、若手が育ちつつあるのも、水谷氏から継承し進化させた“井上イズム”と無関係ではないはずだ。

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