チーム成績が伴っていれば、新人王はこの男だったのではないか……。そう思わせるだけの数字を
又吉克樹は残した。
リーグ2位の67試合に投げ、9勝1敗、2セーブ24ホールド。2.21の防御率以上に目を見張るのは奪三振だろう。右サイドハンドからの速球とスライダーで、奪三振率11.51。これは、最多奪三振の
メッセンジャーはもちろん、同じ救援投手の
呉昇桓の10.94をもしのぐ。狙って三振を取れるのは、ピンチでの登板が多いリリーバーには大きな武器となる。
中学では補欠だった。西原高でも打撃投手だった。それでも夢を捨てず、環太平洋大に進んだことが最初の転機となった。又吉の才能が一気に花開いたのは「1年だけ」の思いで飛び込んだ独立リーグ・香川での西田監督(元
広島)との出会いだった。
プロ入り後は春季キャンプの時点で首脳陣が「秘密兵器」と位置付けた。狙いどおりの大ブレーク。それでも又吉の向上心は尽きることはなく、オフに球団からドミニカ共和国ウインター・リーグへの参加を打診されたとき、二つ返事だったという。
チーム4年ぶりのカリブ武者修行。かつてはエース・吉見やセットアッパー・浅尾、高橋橋聡が腕を磨いた。
10月13日に出発し、強豪のリセイに所属。0勝2敗ながら、17試合で防御率1.69という好成績で、12月5日に帰国した。
「来季に備えて、シュートを覚えたかったんです。当たり前ですが、外国人ばかり。特に右打者がどんな反応をするか確かめたかった」
右打者に踏み込ませないための新球。このドミニカ土産が、又吉をさらに進化させるはずだ。