
涌井はエースとして苦しい戦いの続くチームを鼓舞する
劇的に連敗を止めた。
涌井秀章に白星こそ付かなかったが、間違いなくその勝利はエースの姿がもたらしたものだった。
8連敗で迎えた5月19日、本拠地ZOZOマリンでの
楽天戦。初回から気迫みなぎる投球を続けた。3対2と1点リードの9回も志願登板したが、一死から同点とされ、9回139球でマウンドを降りた。
「勝ちに対するものが何人かに伝わってくれるかなと思って9回もいった」と振り返った涌井。もちろんその思いは野手にも伝わっていた。延長10回にサヨナラ打を放ちヒーローになった根元は、「やはりエース。連敗を止めるのは涌井しかいないと思った。今日の涌井は本当に気合が入っていた」と自分よりも右腕を称えた。
5月12日の
日本ハム戦(東京ドーム)ではパ・リーグワーストの1試合6被弾の屈辱にまみれた。連敗が伸びたことに、自身の責任も感じていた。
伊東勤監督には「どういう状況であれ、チームを救うのがエースの宿命だ」と言われた。さまざまな思いをマウンドで表し、チームに伝播した。
この試合を見た投手陣も奮い立った。
二木康太が「涌井さんのピッチングを見て、投手陣で何も思わなかった人はいないと思う」と話せば、リリーフ陣最年長の
大谷智久も「それぞれが感じるものがあった」と言った。そこからの3連戦で11カードぶりの勝ち越しを遂げたのも、初戦のエースの力投があったからだろう。伊東政権ワーストの8連敗と窮地だったチームを救った、好ゲームだった。
写真=高原由佳