
9点差に追いついた7回裏、勝ち越し2点三塁打を放ちヘッドスライティングをする梅野
まるで劇画に出てくるようなミラクルだった。
金本知憲監督も「長い間プロ野球の世界にいるけど初めてですね」と驚いたほどの大逆転劇だ。後半戦に首位・
広島を追撃する
阪神。下位に沈んだ1年前とは大違いだが、前半戦のこの一戦がチームに自信を持たせた。
5月6日の広島戦(甲子園)、5回表を終えて9点差。この大差を引っくり返し、最終的には12対9で勝ち切った。9点差の逆転勝利は球団史上初のことだ。
まず5回裏に1点を返した。そして、続く6回裏に
高山俊の四球から11人攻撃を繰り出した。不思議なのはこの回ヒットは3本しか出ていないに、7点を奪ったことだ。
広島投手陣の不調もあったが、あきらめなかった阪神の執念が上回ったといえる。6回裏の2度目の打席で1点差に迫る3点三塁打を放った高山は「後ろにつなぐことを考えた」と勝負強さを見せた。
そして、1点を追う7回裏には1度は「セーフ」の判定が、リプレー検証で「アウト」に。同点を逸したが、その直後に
糸原健斗が同点打、
梅野隆太郎が勝ち越し2点三塁打を放った。
今シーズンのここまででもっとも甲子園が沸いた瞬間だったかもしれない。糸原は「集中力を切らさずに打つことができた」。梅野も「消極的になってはダメだと思った」と振り返った。
このゲームで首位に立った阪神は、途中で広島にその座を明け渡したが、金本監督が「我慢強く戦っていく」というように奇跡の再現を狙いにいく。
写真=早浪彰弘