
どんなときもグラシアルは、チームのために一生懸命な姿勢を見せる
文字どおりの『救世主』がチームをよみがえらせた。今季から加入したキューバ人のY.グラシアル。故障したA.
デスパイネに代わり、8月17日に緊急昇格。同日の
オリックス戦(京セラドーム)でいきなり3安打を放つと、ここからチームは息を吹き返し、破竹の9連勝を飾った。
その間のグラシアルは神懸かり的に打ちまくった。21日の
日本ハム戦(静岡)で来日1号。「初ホームランでうれしいけど、これが最後と思っていない。まだまだ打ちたい」との宣言どおりに、翌日の同戦(東京ドーム)は2本のアーチで逆転勝ちに貢献した。そして26日の
西武戦(ヤフオクドーム)。延長12回にあまりに劇的なサヨナラ満塁弾。「自分たちが一番上の場所にいると信じてやっています」と首位西武に3タテを食らわし、奇跡の逆転Vが現実味を帯びた。
キューバ代表にも選ばれた逸材だが、外国人枠の兼ね合いで長くファーム暮らしが続いた。そんな状況に置かれても
工藤公康監督が「真面目すぎるくらい真面目」と評するほどの性格で決して手を抜かない。トレーニングで筋量が増えて早くも5月にはユニフォームを採寸し直したという。内外野をこなせるユーティリティーぶりも魅力の一つ。「チームの勝利に貢献するだけ」と仲間にも愛されている。
内川聖一、デスパイネと主軸中の主軸が欠けても豊富な戦力が穴埋め以上の活躍をする。グラシアルの存在がなければ大型連勝もあり得なかっただろう。新助っ人が歴史的大逆転Vの立役者になるかもしれない。
写真=湯浅芳昭