
バットが湿っても、松田の存在感の大きさは変わらない
Bクラスに沈んでいたチームは8月半ばから急転、首位
西武を猛追し始めた。駆け込み補強の左腕・A.ミランダに、滑り込み支配下登録のルーキー
大竹耕太郎。
内川聖一、A.
デスパイネが離脱した穴はY.
グラシアルが埋めた。遅れてきた立役者は、新顔ばかりではない。盛夏のお立ち台。ざんげと決意を込めて
松田宣浩は言った。
「ほんと、あの、4月、5月、6月、7月、全然打ってなかったんで、8月からは……。いい結果を出すために、これからもやっていきたい」
変化球にバットが止まらず三振。捕れそうな当たりに飛びつくも及ばない。シーズンの滑り出し、攻守とも精彩を欠いていた。6月1日、打撃不振を理由にスタメン落ち。4年ぶり、
工藤公康監督就任後では初で、故障以外の理由でのベンチスタートは2009年以来のことだった。
翌2日にスタメン復帰し猛打賞とカンフル剤が効いたかに見えたが、長続きはしなかった。振り込み、スタンスを変え、バットを替え……。心のどこかにチクリとした痛みを感じながら、懸命に上昇の兆しを探し、遅ればせながら立て直した。
本塁打後の「熱男」パフォーマンスはいまや全国でおなじみとなった。三塁タッチアウトで試合終了となった9月9日の
オリックス戦(ヤフオクドーム)は、その場で右拳を突き上げてしまうほどの元気者。世代交代失敗、後継者不在……、雑音はプレーで振り払うしかない。ベテランの域となった男は、経験や老練さというより、今も日々もがく若手のような姿勢で、チームの先頭に立っている。
写真=湯浅芳昭