
嶺井と併用ながら切磋琢磨でDeNA投手陣を支えている。CS進出には欠かすことができない重要なピースだ
紆余曲折を経た球歴に再び光が当てられている。7月に
オリックスからトレード移籍した
伊藤光は、一軍合流した後半戦からいきなり正捕手の期待を懸けられ、出場を続けている。シーズン中のトレード移籍、まして周囲との連係が不可欠な捕手では異例の出来事だ。それだけの能力の高さを、DeNAは伊藤に評価として与えていたことになる。
かつてベストナインやゴールデン・グラブ賞を受賞して日本代表にも選ばれ、球界ナンバーワン捕手とも称された29歳は、近年出番を減らしていた。若手捕手の育成の狙いもあり、今季もオリックスではわずか7試合の出場だった。
真新しい背番号29のユニフォームに身を包んだ入団記者会見で「11年目だけれど、ルーキーのような気持ちで頑張りたい」と語った。本人には寝耳に水のトレードだったが、閉塞した現状の打破に懸ける思いは持ち続けていた。移籍はそのチャンスでもあった。
7月16日の
ヤクルト戦(横浜)。新しい用具が届かず、オリックスのロゴが入ったレガーズやプロテクターを装着して先発した。「同じ青系でよかった」。8回まで無失点とリードがさえ、盗塁も刺した。2回の第1打席で中前打。実に50打席ぶりの安打だった。
投手の球筋や性格の把握。ベンチや野手とのサイン交換。準備期間の少なさは捕手には死活問題だが、時間が空けば投球動画を見て特徴把握に努め、考えを知ろうと
ラミレス監督の著書も読破した。復活への飢えが伊藤を突き動かしている。
写真=井田新輔