シーズン終盤、一岡竜司はすっかり勝利の方程式のポジションに戻っていた。勝負どころで状態を上げるターニングポイントとなったのは悪夢の3者連続被弾だった。
それは8月17日の
DeNA戦(横浜)。4対1とリードしていた8回、先発の野村が無死満塁の大ピンチを招くと、一岡にお呼びがかかった。酷な場面だったが「それを止めるのが仕事」とマウンドへ。だが筒香への初球ストレートはスッと真ん中に入った。弾丸ライナーが右翼席への逆転満塁弾。大騒ぎの中、宮崎に3球目、ソトには初球を左翼席に運ばれた。「準備はしていた。開き直って投げたけど、こういう形になって申し訳ない」と唇をかんだ。この敗戦で優勝マジックもいったん消滅した。
わずか5球のショッキングな事件。なかなか癒えないような傷を背負いながら、しかし一岡には前に進める精神的強さがある。2日後の同じDeNA戦から、15試合で無失点を続けた。ラスト18試合で計1失点のみ。「そこまで調子はよくなかった」と言うものの、一球の大事さをあらためて学んだことで、この期間は防御率0.51という素晴らしい結果を残した。
信頼を取り戻し、シーズン登板数は自己最多タイの59試合まで伸びた。優勝決定後の10月3日にコンディション調整のため出場選手登録を抹消されたが「いい期間だった」とチームの気遣いに感謝した。ポストシーズンは連投も辞さない覚悟。中継ぎ主将として、ブルペン陣を支えていく。
写真=BBM