
二軍での再調整を経て復調の兆しを見せる井上
自分だけが取り残されている感覚だったかもしれない。
井上晴哉はベンチから仲間の一発攻勢を見つめていた。開幕直後から不振にあえぐ中、4月5日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)でチームは
中村奨吾の2本塁打、
角中勝也にもアーチが飛び出した。自身は9回に代打で空振り三振。昨季の打率.292、24本塁打、99打点のチーム三冠王は「何でみんな、あんなに打てているんだろうな」と声を絞り出した。
2月1日の石垣島キャンプでの紅白戦から実戦13試合で73打席本塁打なし。シーズンに入ってからも7試合で23打数1安打、打率.043、0本塁打、1打点。開幕前から100打席近くも一発が出ないというのは記憶になかった。翌6日のカードもチームは4本塁打をマークし、球団タイとなる開幕8戦連続本塁打としたが、井上の姿は一軍にはなかった。
ファームでの再調整を命じられた大砲は「一軍の打席に立たせてもらえない現状。何か変わらないといけないという井口(資仁)監督からのメッセージだと思った」と受け止めた。「一から作り直すくらいの感覚」と打撃フォームの見直しを開始。昨夏の好調だったときの映像を繰り返しチェックし、再浮上のきっかけを模索。再昇格までに「進化しないといけない」と連日、練習で汗を流した。
主砲を欠く間にチームはリーグ最速の10敗を喫し、苦戦を強いられた。「次に上がるときは恥ずかしい姿は見せられない」と、決死の覚悟で挽回のチャンスを待っていた井上は、4月23日に17日ぶりとなる一軍昇格。ZOZOマリンでの
西武戦で即スタメン出場すると、適時二塁打を含む2安打を放ち、そこからの3連戦で13打数6安打1本塁打と本来の姿を取り戻しつつある。出遅れた分は、これから取り返していく。
写真=BBM