
準備も欠かさない
2013年に日本一に輝いた際、当時の
星野仙一監督は
藤田一也の守備力を「(
中日で名手だった)
高木守道さんの全盛期を見てきたけど、それと同じか、それ以上」と評した。あれから6年がたち、36歳になった今も、藤田の放つ輝きは色あせていない。
強い打球はもちろん、難しいバウンドの打球をいとも簡単に収めるグラブさばき。味方の投手と相手打者の特徴、さらにデータも頭に入れた上での位置取り。そのすべてが名手と呼ぶにふさわしい。
今季初先発となった4月3日の
日本ハム戦(
楽天生命パーク)で見せた遊撃での守備は、まさに職人芸だった。7回一死、
西川遥輝のセンターへ抜けそうな打球に追いつき、クルリと体を一回転させて一塁へ送球。合計8回の守備機会を完璧にこなした。平石監督も「救われました」と絶賛した。
正確で鮮やかなグラブさばきは、幼少期の猛練習で養われた。小学校入学から約9年、登校前と帰宅後にほぼ毎日、壁当てで球を拾った。「それで守備が好きになった。土ではなく砂利道なので、どうバウンドするのか予想もつかない。その練習が今につながっている」と明かした。
今年はFA加入の浅村に定位置の二塁を譲った。36歳での遊撃転向にも、強い決意を持って臨んでいる。「競馬の北村友一騎手と仲良くさせてもらっているのですが、彼は常に馬のことを考えている。真摯に取り組む姿勢が、刺激になっています。僕も頑張らないと」。たゆまぬ努力を続けるベテランは、チームになくてはならない存在だ。
写真=BBM