
その球の質は数字が証明している
松井裕樹の剛球がうなりを上げた。5月12日の
オリックス戦(ほっと神戸)。154キロ直球に、佐野のバットは空を切った。本人は「ここのガン、絶対に速いですよ」と煙に巻いたが、浮き上がるような球を駆使して3奪三振。9セーブ目を挙げた。
154キロは
森原康平、
ブセニッツと並び今季球団最速タイ。スピードに関しては「こだわりはありますけど」と認めながらも、それより大事にしているものがある。回転数(RPM)と回転軸だ。「自分の直球の長所は回転数と回転軸。平均より回転数も多いし、水平方向に近い回転を出せている。そのおかげで変化球も生きるんです」。
今季は2600RPMを超えるときもある。プロの投手で平均とされる数字が2200RPMほど。一緒にキャッチボールを行う
高梨雄平は、松井の進化を肌で感じている。「軸が斜めになった横回転の球は回転数が増える。でも松井の球は縦回転。縦回転で2600を超えるのはすごい。変化球と言えるレベル」と目を丸くした。
6月2日の時点で28試合に登板し50奪三振数。奪三振率は脅威の14.76だ。これも直球の威力が増した影響が大きい。
「則本(
則本昂大)さんに『手首をうまく使え』と言われて、意識してから良くなった。リリースの瞬間、手首をうまく使うイメージ」。まだまだ進化は止まらない。回転数を維持しながら球速がさらにアップしたとき、松井は不動の守護神として君臨する。
写真=BBM