中日では久々に貯金の作れる投手が現れた。3年目の柳裕也だ。開幕からローテを守り、交流戦を終えた時点でチームトップの8勝(2敗)。特に交流戦では、ともに12球団トップの3戦3勝、防御率1.17と抜群の安定感を見せ、MVPに次ぐ「日本生命賞」を受賞。打の
高橋周平とともに、若返りを図るチームの顔に成長した。
「今は自分の球が投げられている。ドラフトで評価されていたときのものがだんだん出せてきて、そこに昨秋のキャンプからやってきたことが上積みされている感じ」。本人がそう充実感を口にすれば、
阿波野秀幸投手コーチも「柳は右の柱」と信頼を寄せる。
広背筋を痛めたこともあり、1年目は1勝。2年目の昨季も2勝にとどまった。「崖っぷち」と位置付けた3年目。昨秋のキャンプで阿波野コーチから提案された2段モーションがはまった。140キロ前後だった直球の球速は、140キロ台中盤までアップした。オフに同行した
吉見一起の自主トレで体幹の重要性を認識したことも、プラスに働いた。
大学時代から武器だったカーブと、昨季から投げ始めたチェンジアップに加え、今季開幕後には
シュートと2つ目のスライダーを習得。緩急を駆使し、ストライクゾーンで勝負することで、課題だった球数の多さも克服しつつある。
1年間、先発ローテーションを守った経験はない。「未知数だけど、必死にやるしかない。チームを勝たせる投球をしたい」。後半戦も、未知の領域を突き進む。
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