
故障もなくシーズンを駆け抜けている荻野
まるで打ち出の小づちのように
荻野貴司のバットからヒットが生まれている。7月4日の
オリックス戦(京セラドーム)で2安打し、連続試合安打は自己新記録となる20の大台に到達。首位打者争いに加わりながら、不名誉な代名詞だった「故障」ともここまでは無縁のシーズンを送る。
「打撃ではしっかりと引きつけることを意識し、追い込まれれば打つポイントを下げ、対応できるようにします。詰まってどこかに落ちてくれればラッキーです」
決して大振りはしない。バットを短く持って、コンパクトな軌道で振り切る。原点は2010~12年と18年の2度、師事した
金森栄治打撃コーチ(現
楽天打撃チーフコーチ)との出会いだ。バットを体に巻き付けるようにし、体を回転させる打法がぴたりとはまった。「それまでは振り回していた」と荻野。打撃はプロ入り早々に固まった。ただ、毎年のように故障を繰り返し、昨季までの最多は17年の103試合。フル出場は一度もなかった。
断捨離が荻野を変えた。「これまでは打てないと、試合後、居残り練習をしたりしていましたけど、今は体のケアを優先し、通常の状態に戻すことを心掛けるようになりましたね」。今年10月には34歳になる。居残り練習で失敗を後悔するより、次の試合へ万全の準備をするよう考え方を変えた。結果、これが故障の予防につながり、パフォーマンスを上げている。
プロ入り10年目。図抜けた身体能力を誇る背番号0が、まだまだ初タイトルを視界の中にとらえている。
写真=BBM