
元気なプレーと声でチームを引っ張る松田宣
今季でプロ14年目を迎えた。開幕戦で通算1500安打。4月に1500試合出場。5月に通算250本塁打も放った。「あと少し」を積み残していた記録の数々ではあったが、
松田宣浩は開幕から試合に出続け、次々と節目を刻んだ。主力が軒並み故障し、野戦病院状態で戦ってきた今季のチームにとって、変わらずに居続け、計算が立つ36歳が代えがたい。
昨季は辛酸をなめた。スランプが長く、守備も精彩を欠き、ついにはスタメンから外れた。戸惑い、モヤモヤを抱えてリーグ2位からの日本一を迎えたが、時を経るうち「そういう厳しい世界にいるんだと再確認できた」。知らず知らずのうち、内に巣食っていた甘さめいたものと向き合った。
世代交代の声を聞きながら「しっかり準備すれば結果は出る。正直、負けてない」と後進に譲る気にもならなかった。自主トレでひたむきに汗を流し、キャンプでは同期入団だった
本多雄一内野守備走塁コーチに特守でしごかれ、齢の近い
内川聖一とは「壁は高くないと」と言い合ってきた。
「痛いところもないし、体は元気。しっかりトレーニングもできている」。失策は2年ぶりの2ケタに乗った。ただ守備がもろくなったわけではなく、むしろ昨季より守備範囲を取り戻した帰結である部分が大きい。
過去2年背負った背番号3から、今季は入団以来の5に戻して臨んだ。「13年前を思い出して。もう一度ルーキーのときのように野球ができれば」。そんな思いが、チームのV奪回への足取りとともに、確かな形になって残ろうとしている。
写真=湯浅芳昭