
シーズン終了後には、ポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を球団が承認。自身の夢に向かって新たな一歩を踏み出す
シーズン成績で見れば、決して満足のいくものではないだろう。それでも2019年の
筒香嘉智の働きは、数字で語ることのできない貢献度があった。
大きな転換点は2つあった。開幕から四番を務めながらも得点圏打率が伸びなかった筒香に対し、
ラミレス監督は球宴後の7月15日の
広島戦(横浜)からプロ10年目で初となる二番で起用した。筒香は「やることは変わらない」と言いながらも、明らかに確実性を追求した打撃で12試合連続安打をマーク。打線のチャンスメーク役として見事にはまり、チームは後半戦開始から12試合を9勝2敗1分けとスパートした。球宴直後に10.5ゲームあった
巨人との差を一気に3.5ゲームまで縮めている。
もう一つは、
宮崎敏郎の故障離脱だ。不動の正三塁手は、8月7日の広島戦(マツダ広島)で左有鉤骨を骨折。プロ入り時は三塁手だった筒香は、翌8日の試合前に三塁でノックを受けた。「体を動かしただけですよ」と言ったが、横浜に移動した9日に早出でノックを受けると、そのままナイターの
中日戦に三塁で先発した。自身5年ぶりのポジションには故障リスクも伴ったが、そこから宮崎が復帰するまでの約1カ月間、守備でもハッスルプレーを見せた。
チームは春先の低迷から巻き返し、巨人と優勝争いを繰り広げた末に前回優勝した1998年以来の好成績となる2位に入った。勝負の終盤戦に主力の故障が相次ぎながら、難しい役回りをこなした主将の犠牲心が逆境を感じさせなかった。
写真=井田新輔