そのウワサは、チーム内で瞬く間に広がった。「山瀬の肩、エグいらしい」。
石川・星稜高からドラフト5位で入団した山瀬慎之助は、天下一品の強肩の持ち主だ。
「ストロングポイントなのでアピールしていきたいです。ほかの部分も伸ばさないといけないけど、送球というか、盗塁阻止の能力では12球団で一番になりたい」
昨夏の甲子園では
奥川恭伸(
ヤクルト)とバッテリーを組んで、準優勝した未来の正捕手候補。学生時代に好きだったというテレビゲーム『実況パワフルプロ野球』ふうに自身の能力値を表現すると「肩だけAで、それ以外(ミート、パワー、走力など)はG」と肩への自信を示した。遠投120メートル超という規格外の武器が話題となったのは、2月の宮崎春季キャンプだった。
ファームでキャンプインを迎えた山瀬は、シートノックで盗塁阻止を想定した二塁送球の練習の際に、地を這うような“剛速球”を披露。チームメートだけでなく、ひむかスタジアムに見学に来ていたファンも「おぉ~」とどよめいた。
實松一成二軍バッテリーコーチも「いいものを持っている」とその才能を認める。
「慎之助」の命名由来でもある阿部慎之助二軍監督は、キャンプ中のファーム対一軍の紅白戦に「いろんなことをいち早く学んでもらいたいという気持ちで、今日もあえてベンチに入れました」と高卒ルーキーでただ一人、山瀬をベンチ入りさせるなど期待をかけており、キャンプ終了後も二軍で英才教育を続けている。
阿部二軍監督を尊敬する山瀬は「憧れの人から指導を受けるのは恵まれたことだと思っています。幸せを感じながらやっています」。スター選手だった同名の大先輩の背中を追う。
写真=BBM