
チームに欠かせぬ存在となった
プロ16年目、34歳のベテランが、新天地で自らの存在意義とその価値を証明した。
涌井秀章は今季、20試合に登板し11勝4敗、防御率3.60。
西武時代の2007、09年と、
ロッテ時代の15年に続き自身4度目となる最多勝を獲得した。
3球団での最多勝獲得は史上初の快挙となった。昨オフ、ロッテから金銭トレードで加入した涌井は序盤戦から、圧巻の投球を見せ続けた。移籍後初登板となった6月24日の
日本ハム戦(
楽天生命パーク)では7回2失点。移籍後初勝利を挙げると、勢いに乗った。
何と8月19日の日本ハム戦(札幌ドーム)まで、無傷の8連勝。武器となったのが、「こやシン」だ。
小山伸一郎投手コーチに握りを教わり、新たにシンカーを習得したことで投球の幅が広がった。「ストレートとそこまで変わらないスピードで(右打者)に食い込んでいくから、バッターもなかなか狙いを絞れないと思う」。もともと多彩な変化球に、新たな球種が加わったことで、相手はさらに狙い球を絞りにくくなった。
豊富な変化球に加えて、制球力も抜群。ベテランらしい投球術で、相手打線を幻惑した右腕は「今年はストレートが戻ってきましたし、投げ方もある程度いい状態を維持できたことが、開幕8連勝につながったと思います」と手応えをにじませた。
19年は18試合に登板して3勝7敗に終わっていた。華麗に復活を遂げたわけだが、手放しでは喜べない。「チームとしては4位という悔しいシーズンでしたので、来年も1年を通してローテーションを守り、チームの優勝に貢献できるように頑張ります。そして、またこのタイトルを獲りたいです」と、さらなる活躍を誓っていた。
写真=BBM