
桑原の劇的な復活が、チームに好影響を与えている
ここまでの好成績を誰が予想できただろうか。
桑原将志がプロ10年目で再ブレークを果たしている。不動のリードオフマンとしてすでに4年ぶり3度目となるシーズン規定打席をクリアし、自身初の打率3割超えに加え、首位打者のタイトルをうかがうまでの位置に付けている。近年不調にあえいできた男の、カムバックどころか過去最高の姿と言っていい。
レギュラーを失った要因である確実性が解消されても、思い切りの良さは健在だ。9月14日の
巨人戦(東京ドーム)で10号本塁打を放ち、4年ぶりの2ケタに到達。19日、20日の
中日戦(横浜)では球団タイ記録となる2試合連続の初回先頭打者本塁打でチームを勢いづけた。有望株の多い外野は激戦区と言われたが左翼の
佐野恵太、右翼の
オースティンは固定。残る1枠は完全に奪い返した。
昨季まで2年間は計24安打で大半をファームで暮らした。打撃開眼の理由は、意識の変化だという。本人は「自分らしく打席を送るというのを大前提において」とした上でこう説明する。「この打席はこうすると決めて、振り返りは後からするようにしている。今までの僕なら、併殺打があったら次は何とかしようとなっていた。でも今は割り切っている」。負けん気の強さは持ち味でもあるが、それが精神的なムラを生んでいた。今は前後裁断で1打席に集中している。
9月30日時点で打率.315は
広島の
鈴木誠也に続いてリーグ2位。初の打撃タイトルに向けてライバルには佐野、オースティン、宮崎など同僚も多い。たとえ手が届かなずとも、28歳は今季替え難いものを手にしている。
写真=井田新輔