佐々木朗希の可能性は、どこまでふくらんでいるのだろうか。大船渡高3年春のU18高校日本代表研修合宿で163キロを計測し、『令和の怪物』と呼ばれた若者の剛速球は、これまでの国内では誰も投げることができなかったレベルのものである。
プロ1年目のシート打撃であっさりと160キロを計測すると、その後はコンディション不良などもあって、体力強化に専念したが、プロ2年目には無理に出力を上げずに159キロを計測した。そして今季は164キロを計測。完全試合、13者連続奪三振を記録するなど、右手中指のまめをつぶすアクシデントもあったが規格外の投球を続けている。
球威だけで打者を圧倒できる佐々木朗だが、試合の中でマウンドに上がれば、直球にこだわらず、変化球を交えながら球数少なくゲームメークすることにこだわる。投手として「160キロをコントロールできる投手になりたい」との独自の美学を持つ。
日本人最速は2016年10月16日、
日本ハム・
大谷翔平(現エンゼルス)が
ソフトバンクとのクライマックス・シリーズ、ファイナルステージ(札幌ドーム)で9回からリリーフし、165キロを計測したものだ。
球速差にして、わずか1キロ。並の投手ならば、その1キロが大きな壁となりそうだが、佐々木朗が初めて164キロをたたき出したのは、今季初登板だった3月27日の
楽天戦(楽天生命パーク)の初回だった。当時の仙台は、まだ肌寒い季節。リミッターを外せば、すぐにでも記録を更新できそうだが――。
「いつも通り投げて、記録更新できればいい」
これもまた、この男の美学なのだ。
写真=BBM