魂の20球だった。交流戦の開幕戦となった5月24日の
日本ハム戦(神宮)で、田口麗斗が延長10回無死満塁から登板。絶体絶命のピンチを無失点で切り抜け、雄たけびを上げた。
「開き直らなきゃいけなかった。1点を争うゲームでしたし、すごく均衡していたので、いい切り替えができて目の前のバッターに集中できたのかなと思います」
この試合で投げた球種は、2種類だけだった。自己最速を更新する151キロを計測した直球とスライダーだ。
巨人時代から縦変化と横変化2種類を投げ分けてきており、田口の代名詞でもある。カウントを整える球でもあり、決め球としても使う。まさに軸となる変化球で、磨きに磨きを重ねてきた。
ヤクルトに移籍2年目の今季は、開幕から15試合連続で無失点を継続。9月11日現在でも39試合に登板し、防御率1.47と安定感は抜群。一時はピンチの場面で登場し「火消し役」を務める機会も多く、
高津臣吾監督は「すごいしんどいところばかりですけど、本当にいい仕事をしてくれていますね」とその存在の大きさを口にしていた。
シーズンも終盤戦となり、チームはリーグ連覇に向けて首位を走っている。今季は救援陣の活躍が目立つが、その中心の一人が田口だ。「チームで目指すものがあるので、そのピースになれるようにしたい」。武器である2種類のスライダーがここぞの場面で決まれば、勝利につながる。そして「優勝」の2文字もはっきり見えてくる。
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