さらなる飛躍を遂げるはずだった。シーズン佳境に差し掛かる8月。大観衆もスポットライトもないジャイアンツ球場に、昨季の新人王、大勢の姿がある。
「信用して9回を投げさせていただいていたので、1年間守り切りたかった。本当に申し訳ないという気持ちです。焦ってしまうと今後のプロ野球生活にも関わってしまうので難しいんですけど、一日でも早くマウンドに帰りたい」
関西国際大からドラフト1位で入団した昨季は開幕から守護神を託され、57試合に登板して新人歴代最多タイの37セーブをマークした。今年3月のWBCでは侍ジャパンの一員として世界一を経験。これ以上ない順調なキャリアを送っているように見えた。
だが、6月末に右上肢のコンディション不良を訴え、同30日に登録抹消。ノースローでの調整期間も設け、8月に入ってもリハビリの日々が続いている。今季は登録抹消までに24試合に登板し、2勝0敗、防御率3.00。14セーブを挙げてはいたが、5月には2戦連続でセーブに失敗するなど、圧倒的だった昨季からの“異変”の予兆はあった。
「まだ(今季中に)戻るチャンスがあるので『ぶっ壊れなくてよかった』とポジティブに捉えて頑張りたい」
後半戦の逆転Vを現実のものとするためには、若き守護神の存在は欠かせない。8月中の実戦復帰を見据えながら、じっくりと体と向き合い、万全の状態を取り戻す。
写真=BBM