
紆余曲折を経て取り戻した速球を武器に、新天地でポテンシャルがついに開花した
5球団が競合した逸材の魅力が、
田中正義のスピードボールには詰まっている。新天地の
日本ハムへ移籍して1年目の今季は自己最速タイの157キロを計測した。春季キャンプ中の2月25日に行われた
楽天とのオープン戦(名護)で早くも記録し、シーズン開幕後はクローザーとして10セーブ目を挙げた6月16日の
中日戦(バンテリン)でもマークした。
2016年ドラフト会議の超目玉候補として注目された創価大時代も「最速157キロ右腕」として脚光を浴びていた。プロ入り後は右肩の痛みとも闘いながらで安定したパフォーマンスができなかったが、環境が変わったことで底知れないポテンシャルがついに開花。チーム内でも屈指のストレートの球速と質の良さで、自然と守護神の座に就いた。
紆余曲折を経て取り戻したスピードボールを武器に、また節目に到達したのが8月15日の
ロッテ戦(エスコンF)。2点リードの9回にマウンドに上がり、1点差に迫れるもリードを守って20セーブ目を挙げた。「2点差あったので、しっかり切り替えて投げました」と修羅場を経験するごとに“クローザー・マインド”も急成長。堂々と投げ続けている。
シーズン序盤はマウンド上で笑顔を浮かべながら投げていた。
新庄剛志監督から「そのほうが力が抜けるでしょ」と助言を受け、実行していたスマイル投法だったが、今では笑顔がなくても頼もしさは変わらない。「しっかりキャッチャーを信じて自分の球を投げることしか、今は意識してないです」。自信が備わった速球王は、もう道に迷うことはない。
写真=BBM