
満を持して念願のマウンドへ、九里の思いは強い
右腕の胸中に、まだ実感は湧き上がってこない。「本当に投げるのかな」。沖縄キャンプが始まって間もない2月16日、
九里亜蓮は
新井貴浩監督から「開幕投手は亜
蓮でいく。任せたぞ」と3月29日の
DeNA戦(横浜)の先発を告げられた。プロ11年目、32歳6カ月で初の開幕投手は、球団では1992年の
川口和久の32歳8カ月に次ぐ年長となる。
ずっとあこがれていた栄誉あるマウンドだ。「先発をやらせていただいている以上、そこを目指してやらないといけない」。初めて規定投球回に到達した2020年オフから毎年この言葉を繰り返し、このオフは何度、口にしたか分からない。「いい準備をして、持っているものを100パーセント出し切れるように。開幕まで1日もムダにすることなく、できることをやっていきたい」と背筋を伸ばした。
昨年までは5年連続で
大瀬良大地が大役を担った。その同期右腕は昨秋に右肘手術。候補には昨季チーム最多11勝の
床田寛樹と9勝の
森下暢仁もいた。九里は8勝ながら、リーグ最多の174回1/3でチームで唯一、一度も先発ローテを離れなかった。指揮官はその信頼とともに、「開幕にいきたい! という強い気持ちを感じた」と就任2年目の初戦を託した。
オフから、昨年のオールスターでT.
バウアー(当時DeNA)に教えを請うて研究してきた新球「スプリットチェンジ」の習得にも取り組んできた。「変わらずに後悔するより、変わって結果を残せないほうが後悔しない」。変化を恐れず、念願だった初の開幕マウンドから最高のシーズンをスタートさせる。
写真=BBM