シーズン最終盤の大失速で4位に沈んだとはいえ、それまでの優勝争いの陰にベテランの力があった。
會澤翼はプロ18年目の今季、57試合に出場して打率.187。この数字だけを見ると物足りなさが残るが、昨季より10試合増えた先発マスクの49試合でチームは27勝20敗2分け。借金2でシーズンを終えた戦いの中で“勝てる捕手”として存在感を放った。
主に
大瀬良大地、
森下暢仁の先発時の“専属捕手”を務め、救援陣を含めたチーム防御率2.62に対し、“會澤防御率”は1.94という安定感。ロースコア続きの戦いを支えた。
ローテーションの柱の2人をリードした背景があるとはいえ、大瀬良のノーヒットノーラン、森下の91球でのマダックス達成は、投手の力だけで成し得るものではない。それでも「僕は逆に感謝している」と、脇役に徹する姿勢を強調した。
チームが球団ワーストの月間20敗と苦しんだ9月は、わずか5勝の中でも、
新井貴浩監督がベテランの力に頼ってつかんだ1勝があった。9月7日の
中日戦(マツダ広島)で、會澤が1点リードの8回から“抑え捕手”としてマスクをかぶった。指揮官から「僅差のしびれる展開で経験というのは大切」と送り出され、勝利を締めくくった。来季以降、こういった起用も増えるかもしれない。
来季も少ない出場機会の中で実力を発揮することが求められる。ただ、常日ごろから「試合に出てナンボ」と繰り返すように、今の立場に甘んじる気持ちはない。今年以上に
坂倉将吾、
石原貴規といった後輩捕手を突き上げるような存在となり、投手陣を含めたバッテリーをけん引していく。
写真=BBM