
昨年は勝利を挙げられなかったが、今年は新たな気持ちで野球を向き合っている
15試合先発で0勝11敗。それは、あまりに衝撃的な成績だった。2021年から3年連続2ケタ勝利を重ねてきたエース的存在の
高橋光成である。春季キャンプ中に右肩の張りを発症した影響で多少の出遅れはあったとはいえ、復帰後は登板へ向けて自身の現状でできる最善の準備を尽くしての結果が未勝利である。
「こんなことがあるのか?と思いましたよね」
さすがにショックは大きかった。
だが、絶対にそこで自信を失ったり、立ち止まったりしないのが高橋である。
「いろいろ言われましたし、なんとか結果を出そうと自分なりにいろいろ考えて試行錯誤しましたが、全部が噛み合わなくて、自分のパフォーマンスが出せなかった。でも、こんな苦しい経験ができたことが、これからの野球人生にプラスだったと思いますし、この経験があったからこその自分が出せると思います」。
「思っている球が行かない」という現実としっかりと向き合ったなかで、昨秋からトレーニング方法を大きく変えた。
「去年はパワーを求めてあえて体重を増やしたのですが、それによってもちろん良かった部分もありましたが、もう少しキレが必要だなと感じました。今年は、もっとスピードに特化して、同じウエートでも、重さももちろん大事ですが、それ以上にいかに初動を早くバーベルを上げるかというトレーニングをメインでやっています」
自主トレでは、19年からの飛躍のきっかけとなった
菊池雄星(エンゼルス)から再び多くの学びを得た。
「『越えられない壁はない』と言いますから」
苦しみが大きかったからこそ、乗り越えた先に見える景色は、また格別に違いない。
写真=BBM