絶対的守護神が移籍し、抑えの座が空位になっている。「ライデル(
ライデル・マルティネス)が残留していたとしても、僕は抑えを狙ってましたから」。熱過ぎる眼差しでそう語るのは3年目の松山晋也だ。
育成ドラフト1位で2023年に入団すると、その年に支配下登録されて36試合に登板。昨季は59試合、2勝3敗、防御率1.33で最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。
ドラフト前夜には「最後はやることをやって野球の神様にお願いするしかない」と八戸学院大のグラウンドのマウンドに布団を敷き、寝たのはいまや有名な逸話となっている。
人体模型を購入し、自宅で人の体の動きを研究する。さらに今年の自主トレでは軽トラックを引っ張ってぶっ飛びのトレーニングで肉体強化に励んだ。2年目の春季キャンプは、そのパワーをボールに伝える動作を仕上げるための期間となる。
「真っすぐの質向上を図るのが第一。刀を研ぐイメージで上げていきたい」。キャンプ初日には34球を投げ込み、威力抜群の真っすぐで周囲を驚かせた。ちなみに球数は「さん(3)しん(4)です」とちゃめっ気も忘れていない。
クローザー争いは熾烈を極めそうだ。松山も名乗りを上げているが、
清水達也、
藤嶋健人らも黙っていない。新助っ人の剛腕マルテは最大のライバルとなりそうだ。
「もう一度、人生を変えられるように頑張りたい。やるだけです」。育成選手として入団し、2シーズンで立場は大きく変わり、見える世界も一変した。それでもまだ道の途中だと言い切ることができる。それが松山だ。
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