優しそうな表情の裏に強い覚悟がある。4月6日の
阪神戦(東京ドーム)。この日に昇格した中川皓太は6回に二番手で登板し、248日ぶりに一軍マウンドに立った。三番・
佐藤輝明、四番・
森下翔太から三振を奪うなど、見事に中軸を三者凡退に斬って取った。
春季キャンプから通じて今年初めて一軍に合流した左腕は、「チームに勢いを与えることが、昇格してきた選手には求められると思う。自分の投球で流れを変える存在になれるように」と言葉に力を込めた。
試合前のロッカールームではチームメートとともに、同じ東海大出身で巨人時代も自主トレで弟子入りし、この日にメジャー初勝利を挙げたオリオールズの
菅野智之とテレビ電話で言葉を交わしたという。「おめでとうございますと伝えました。『頑張れよ』と言っていただいた」と、35歳にして新たな挑戦を続ける先輩から刺激を受けた。
昨季は4月に左膝痛で戦線離脱。6月末に一軍に戻ったものの、本来の投球をすることができず8月に再び登録を抹消された。4年ぶりのリーグ優勝を勝ち取った終盤戦は戦力になることができず、「ほぼ二軍にいて悔しかった」と自身の喜びは薄かった。15試合の登板で防御率8.76は、かつて中継ぎエースとしてチームを支えた男にとってはあまりにも物足りない数字だ。
「結果が求められる年齢なので、期待に応えられるように」と中川。31歳で迎えたプロ10年目の節目のシーズンに、輝きを取り戻す。
写真=BBM