自身を真っさらな状態に戻して、今季を迎えた。
「レギュラーを取らなきゃいけない」
矢野雅哉は昨年、開幕スタメン外から正遊撃手へと上り詰め、念願のゴールデン・グラブ賞を受賞。今季さらなる進化とともに、真価が問われるレギュラー2年目となる。
4月28日現在、開幕から23試合を終え打率.205と目立った成績は残せていないが、矢野の価値は数字では測れない。
4月15日の
中日戦(マツダ広島)の初回、先頭・
二俣翔一が9球粘った末に凡退した直後の打席で、10球目を左前に運んだ。2点先制の起点となる粘りに、
新井貴浩監督は「矢野が火をつけた」と、7対1と快勝した試合で一番の活躍に挙げた。
開幕からほぼ全試合で二番(一番、六番が1試合ずつ)に座り、8犠打は両リーグトップ。その中に、勝負を決めた1本がある。4月12日の
巨人戦(マツダ広島)の3回のスクイズだ。
「最近みんな打っているけど、二番が足を引っ張っている。何とか決めたいなと思って打席に立った」
初球をファウルにしながら、4球目の2度目のサインに応えた。外角に外れた難しい投球に食らいついた。両チーム唯一の得点を生み出し、1対0の勝利をもたらした。
チームは開幕連敗、2カード連続の負け越しとスタートにつまずきながら、13戦目に単独首位に立った。オープン戦は12球団最少34得点で終えながら、開幕後は15試合で60得点はリーグ最多。
新井監督は「彼はいろんな動きができる選手。二番に置くことで、こちらとしてもいろいろな作戦を立てやすい」と、打線のキーマンに位置付ける。球界屈指の実力を誇る守備は当然ながら、何を置いてもかけがえのない存在だ。
写真=井沢雄一郎