
優勝争いを制する力に
珍しい光景だった。8月30日の
楽天戦(エスコンF)、8回表のこと。一塁側ベンチで新庄監督が身ぶり手ぶりを交え、アドバイスを送っていた。その相手は、先発した
加藤貴之だった。「ああいうことは初めてだと思う。本当にありがたいことです」。
その試合で今季6敗目を喫した10年目左腕は、指揮官による異例の行動に感謝した。
その日は6回6安打4失点と苦しんだ。チーム事情で一軍での先発が2週間ぶり、本拠地での登板も約1カ月半ぶりとあって、精密機械のような制球力が珍しく1回から鳴りをひそめた。リズムに乗れぬままイニングと失点を重ねる姿を見た指揮官には、いい時の加藤貴とのギャップが手に取るように分かったようだ。
助言内容は投球フォームについてだった。「体の使い方。そこは自分でも分かっていることを監督にも言われたので。直さないと、また同じ結果になってしまう。こういう投球はなくしていきたい」。自身でも感じていた課題と一致した指摘を受け、シーズン最終盤へ向けての気持ちも新たにした。
今季は豊富な先発陣による“ゆとりローテ”の中で前半戦は7勝を挙げたが、後半戦は黒星先行で苦しんでいる。5年連続の規定投球回到達、2年連続の2ケタ勝利もまだ手に届く位置にある中で個人成績を伸ばせば、おのずと
ソフトバンクとの激しい優勝争いを制する力にもなれる。16年リーグ制覇&日本一を知る加藤貴のラストスパートが、9年ぶりの栄冠には欠かせない。
写真=BBM