移籍を機に、辰見鴻之介の野球人生は大きく変わった。昨年の現役ドラフトで広島に加入して迎えた今季、大きな飛躍を遂げた。
代走の切り札として開幕一軍に名を連ねた。移籍を機にヘッドスライディングを解禁。リードからスタート、スライディングに至る技術を磨くだけでなく、今季から一辺が約7.6センチ大きくなった拡大ベースも追い風となった。
昨季まで所属した
楽天では3年間で通算2試合の出場にとどまったが、広島では70試合に出場し、シーズンを完走した。
9月15日の
ヤクルト戦(神宮)は、9回無死一塁から代走として出場。一死後に二盗を成功させ、シーズン27個目の盗塁を決めた。代走では26盗塁となり、1979年
藤瀬史朗(近鉄)が代走で記録したシーズン最多25盗塁(シーズン27盗塁)を抜いて歴代最多となった。
新井監督は「スピードはもちろん、スタートを切る勇気を持っている。準備などもプロフェッショナルだと思います」と、その姿勢を認める。その後、記録を27盗塁(シーズン28盗塁)まで伸ばした。
シーズン終盤には、
井口資仁監督の初陣となるアジアプロ野球チャンピオンシップに出場する侍ジャパンに選出された。アマチュア時代から代表というものに縁遠い選手だった。
「まったく想像できなかった。これまで代表経験も、選抜に選ばれたこともなかった」
俊足という武器を生かして新天地で大きな飛躍を遂げたスピードスターは、日本代表のスペシャリストへ――。
わずか1年で、誰も予想できない出世街道を駆け上がった。
写真=井田新輔