
国際アマチュア選手との契約は16〜17歳の少年たち。将来どうなるか分からないが、各球団ともさまざまな手段で獲得しようとしている。写真はレッドソックスと41万ドルで契約しスター選手となったボガーツ/写真=Getty Images
MLBではルール通りに30球団が行儀よく動いているわけではない。ルールの盲点を見つけ、他球団を出し抜こうとする。中でも、7月初めの国際アマチュア選手の契約は容赦ない。関係者は無法者が暴れまわった西部劇の舞台「ワイルド・ワイルド・ウエスト」に例える。
昨年ジャイアンツは、キューバ生まれドミニカ共和国在住の外野手と250万ドルの契約金で合意、アメリカの代理人とファックスで書面のやり取りをし、代理人のサインはもらった。アメリカFA選手ならこれで決まりだ。
ところがその選手にはドミニカ共和国にも代理人というか世話役がいた。カブスはそちらに接触し、ジャイアンツの金額に50万ドル上乗せして合意、選手も契約書にサインした。MLB裁定は、本人のサインがあるのでカブスの勝ち、ジャイアンツに言わせれば略奪である。
そんな話があった中、今回MLBが発表したレッドソックスへの厳しい処分に「なるほど」と感じた。2014年、同球団は決められた契約金の上限(318万ドル)を超過。ヨアン・モンカダ、
アンダーソン・エスピノーザらと契約した。
ルールで15年の夏、16年の夏は一人の選手に、30万ドル以上の契約金は支払えない。つまり大物は取りにくくなる。ところが15年、レッドソックスは2人もトップクラスの選手を獲得した。調査の結果、パッケージディールという裏技があったと分かった。
同じ代理人が持つ複数選手と契約して、それぞれ30万ドルを超えないように契約金をまとめて代理人に支払う。代理人が、その中からトップ選手に市場価値の金額を手渡す。今回処分で5選手の契約が無効になったが、150万ドル近いお金が動き、トップ選手に60万ドルから70万ドルのお金が支払われたと推測できる。
パッケージディールは業界内では公然の秘密で、今回初めて罰金が科された。レッドソックスは近年、国際アマチュア市場で圧倒的だった。スーパースターとなったザンダー・ボガーツ遊撃手もそう。現在同球団のトッププロスペクトは4選手中3選手がそのルートで入った。
ぺナルティの内容は、既にファームで練習していた5選手の保有権をすべて失い、16年(今年)は一切国際アマチュア選手と契約できないというもの。これくらいの処分は当然だろう。さりとて、これで不法行為が収まるとも思えない。
ところで、7月2日解禁の今年の市場では、パドレスとカージナルスが積極的だった。パドレスは上限335万ドルだったが、ルイス・アルマンザ遊撃手だけで400万ドルを出し、ほかにも190万ドル、185万ドルと大型契約連発、16選手と合意した。
カージナルスも202万ドルの上限を大幅に超え、13選手と合意した。両球団とも17年、18年は30万ドルの制限が課せられるのを承知で今年巨額の資金を投入した。カブス、ドジャース、ジャイアンツなど、通常国際市場に強いチームが、今年は30万ドルの制限下にあって、積極的に獲得に動かないのも、折り込済みみ。現行のルールゆえだがこういう駆け引きも興味深い。
とはいえ金の卵たちは16〜17歳が中心で、身体能力はともかく、野球の実戦経験は多くない。彼らに高額を支払うのは博打同然で、ゆえに西部劇の舞台にふさわしいとも言えるのである。