
日米大学選手権は3連覇に王手をかけてから連敗で優勝を逃し、敵地・アメリカで悔しい経験をした。当初は同大会のみの出場だったが、チームメートのアクシデントにより再び、日の丸を背負う/写真=佐伯要
「代替招集」で得たチャンスを飛躍の糧に
「今ではなく、先を見ろ」。コーチからそう指導されて成長を続けている右腕が今夏、侍ジャパン大学代表としてマウンドに立っている。
日体大の
松本航(3年・明石商高)。右腕から145キロ前後の伸びのある直球を軸に、カットボールやスプリット、カーブ、ツーシームなど多彩な変化球を使って打者を打ち取る。
高校時代から「近畿No.1右腕」と称され、プロのスカウトから注目される存在だった。しかし、プロ志望届を出さずに日体大へ進んだ。
「プロへ行きたい気持ちもあったけど、『大学でもっと成長する』と自分に期待しました」と松本は言う。
入学した2015年春。日体大から11年のドラフト4位で
中日へ入団した投手で、14年限りで現役を引退した
辻孟彦氏が母校のコーチに就任した。辻コーチは松本と初めてキャッチボールをしたときのことを鮮明に覚えているという。
「軽いキャッチボールをして、すぐに球質の良さが分かりました。プロになる可能性を感じましたね」
敵地Vに王手をかけた大一番で得た“収穫”
松本は1年春から首都大学リーグ戦で登板し、同秋には先発を任されるようになる。当時、直球には自信があったため、変化球を磨こうとしていた。だが、辻コーチが「待った」をかけた。
「目の前の試合で勝つことも大事だけど、この先に上の舞台で活躍することを考えよう。変化球でかわすより、直球を磨き続けろ」
このアドバイスで「自分の芯ができた」と松本。それからは球の回転数を意識し、直球の質にこだわるようになった。それが昨春の好結果につながる。6勝を挙げ、6季ぶりのリーグ優勝に貢献。最高殊勲選手と最優秀投手に輝くと、昨年6月には侍ジャパン大学代表候補の選考合宿に招集された。
このときは代表入りを逃したが、昨年11月と今年3月の選考合宿を経て今夏の侍ジャパン大学代表に初選出され、7月の第41回日米大学選手権(米国)に出場した。同選手権では2試合に登板。優勝に王手をかけた第4戦では1対0とリードして迎えた8回のマウンドを託されたが、2安打を打たれて同点に追いつかれてしまった(チームは延長タイブレークの末に1対3で敗れた)。
「マウンドに立ったとき、日の丸の重みを感じました。同点にされ、すごく悔しかった。自分の無力さを感じたというか……。直球は通用する手応えはありましたが、足りないところがまだまだある。これからレベルアップしていきたいと思います」
当初は日米大学選手権のみに出場するメンバーとして代表入りしていた。だが、東北福祉大・
津森宥紀(2年・和歌山東高)が同選手権で打球を受けて負傷したため、代わって第29回ユニバーシアード競技大会(8月20日から、台湾)にも代替出場することになった。松本は早々に得たリベンジの機会に意気込む。
「日米では高めに浮いた球を打たれました。ユニバーシアードでは低めに制球することを意識します。カーブを低めに集めて緩急を使えれば、と思います。日米の経験を生かして、自分のよさを出したい」
伸び盛りの右腕が国際舞台で貴重な経験を積み、さらにステップアップしていく。(取材・文=佐伯要)
PROFILE まつもと・わたる●1996年11月28日生まれ。兵庫県朝来市出身。176cm83kg。右投右打。梁瀬小2年から梁瀬少年野球クラブで内野手として野球を始める。小5から投手。朝来中では軟式野球部に所属し、投手。明石商では1年夏からベンチ入りし、2年夏からエースとなる。2年夏、2年秋、3年夏はいずれも兵庫大会で8強入りした。日体大では1年春からリーグ戦に登板。2年春に6勝を挙げて最高殊勲選手と最優秀投手に輝くなど、3年春までの通算で18勝をマークしている。